津軽藩以前

かんから

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石川高信、病没 元亀一年(1570)春

鉄砲との出会い 5-3

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「この図面、しばらく借りてもよいか。」

 為信は手を合わせ、二人に懇願する。二人としては、なすすべがない。

 そうして為信は帰っていった。


“……危ないところだった”

“殿自ら、下々のところに来るとは”

 “今後は気をつけねば”



 道すがら、為信は考えた。鯵ヶ沢の大家主と言えば、一人しかいないだろうと。理右衛門だ。そこで面松斎は世話になっているか。
 話の種として、火縄のことも話してみよう。




 山々の頂上の葉は落ちきり、平野にかけては丁度紅葉の見ごろである。理右衛門屋敷の庭先モミジも、鮮やかな様であった。

 為信が客間で茶をすすっていると、渡り廊下より面松斎が、着飾った格好でやってきた。

 「為信様、お久しゅう。」

 思わず、大きく笑ってしまった。面松斎も故はわかっている。

 「客もそれ相応のものを望んでおります。……仕方なしにこのような……。」

 手を曲げて、いかにも芸者のような身振りをする。“大占学者”としての雰囲気とはいかなるものか。

 落ち着いたところで、面松斎は客間に入る。早速、火縄の図面を見せる。

 「確かに……こちらはこういうのが遅れておりますな……。」

 面松斎は相槌を打った。為信は言う。

 「一度でもいいから、触ってみたいのだ。」

“……そうなると、やはり理右衛門様ではないですか”

 “理右衛門のう……”

 為信は、この家の主人である理右衛門を呼んだ。理右衛門はいつものように朗らかで、大黒様のようでもあった。火縄のことを言ってみると……。

 「一丁だけ、持ち合わせております。よろしければ進呈いたします。」
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