ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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めいでぃっしゅへようこそ! 編

113. 水を得た女神

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 仲間の少女たちからプレゼントを贈られ、その後たっぷりと絞られた日から一夜明け、ユーゴは今日もホワイトホースに出勤していた。
 ネルとしては断固として辞めさせようとしていたが、恩人である鉄太の肝いりという事で、他の三人がネルをなんとか宥めたのだ。
 ただし、女性と不適切な関係にならないこと。
 これだけを四人と約束されられ (ユーゴ的にはこれも理不尽だと思っているが)、勤務継続の許可が下りたのだった。


 今日も今日とて指名客の相手をしていると、来客を報せるドアベルがカランと鳴った。
 ザワッと店内が一様に驚きに包まれるのが判った。

「う……美しい。こんなに美しい女性はついぞ見たことがない」

「なんて神々しい美貌なんだ」

 えせ騎士たちの口から賛美の声が漏れ聞こえてくる。
 いや、騎士たちだけではなく、女性客も息を呑むのがわかった。
 どんな客か気になったが、ユーゴの座る席からは死角で見ることができない。かといって【千里眼ワールドゲイザー】を使うほどのことでもない。
 まぁいいかと接客を続けるユーゴの耳に、

「ええ~。めっちゃイケメンばっかじゃーん。ヤバ!」

 とても軽いノリの女性の声が聞こえた。

「……いや、まさかな」

 何だか聞き覚えのある声のような気がしたが、気のせいだろうと思うことにした。強引に。

「お嬢様。本日はお目当ての騎士はいらっしゃいますか? それとも、お相手はこちらにお任せでよろしいですか?」

「えっとぉ、実はウチのダーリンがここで働いてるはずなんだけどぉ」

「ダーリン、と仰いますと?」

「ユーゴって人、いるでしょ?」

 悪い予感が当たってしまった。苦悶の叫びツッコミを喉から抑えたせいで代わりに鼻水が吹き出しそうになったが、それもユーゴは全力で堪えた。

「ユーゴさん」

「ああ、分かってる。いま行く」

 相手をしていた令嬢に断りを入れ、ユーゴはそこへ足を運んだ。
 ユーゴがその席へ着たときには、その客の周りにはすでに四人の騎士が座っていた。

「よぉ。お楽しみだな」

「あー、ユーくぅうぅぅぅぅん! やおぴー (←挨拶)」

 輝く笑顔で、新たな指名客が両手を広げてユーゴを歓迎した。
 その笑顔を見て、周りの騎士は、太陽が凝縮されたかのようだと思った。
 しかしユーゴはというと、太陽ではなくラフレシアを思い浮かべた。

「お前、ずいぶん久しぶりに顔を見せたと思ったらコレかよ」

「だって~。こっちだって色々と大変だったんだよー。女神は忙しいんだって」

 そう。イケメン騎士を侍らしていた指名客は、女神ユーラウリアだった。

「つーかその格好なんだよ。キャバ嬢か」

 ユーラウリアの服装はいつもより派手である。
 股下五センチメートルのタイトなドレスはキラキラとした生地で出来ていて、女神というよりは夜の蝶という風情だ。
 足を組み替えるたびに両脇に侍る騎士たちの鼻が伸び、好色な視線が女神のけしからんフトモモに注がれる。
 この世界に於いてこのような扇情的な格好の婦女子はいない上に、その本人がまた天上の美貌をしているとあって、女に不自由しないホワイトホースの騎士たちも既にユーラウリアの虜になっていた。

「えー。せっかくユー君の働いてるお店に行くから、おめかししたのに。てかそれよりさ、挨拶があるでしょ? ア・イ・サ・ツ」

「チッ。なんで知ってんだよ……」

 苦々しく吐き捨てて、ユーゴはユーラウリアに対して跪いた。

「お嬢様。今日は来てくれてありがとう。すごく、嬉しいぜ」

 ネル達は知らないようだったので敢えて教えなかったが、ホワイトホースには指名客や新規の客には跪いて礼を述べるというしきたりがあるのだ。
 それを見たユーラウリアは、

「あん、ヤバッ。推しの男の子に跪かれるって何かイイ。これハマりそうかも」


 ゾクゾクと背中を震わせ、恍惚とした表情でよだれを垂らしていた。

「もう二度としねぇよ。それより、は持ってきたんだろうな。こっちは訊きたいことが山程あるんだ」

「もう、せっかちー。あ、お兄さんたちもういいよ。ありがとー。ユー君、お酒作ってー」

「お前ほんとこの店に馴染み過ぎだよ。本当はキャバクラの女神なんじゃねぇの? それかホストの女神」

 ヘルプの騎士たちを退がらせてユーゴを隣に座らせると、ユーラウリアは本題に入った。

「違うし。それ別の女神ひとだし。てか、うん。あるよ、お土産話。でもそれより先に、ユーくんの質問から聞くよ」

「いるんかいキャバクラの女神……。そうだな、まずは……日本に行こうとゲートを潜ったら、この世界に迷い込んだ。しかもここは、俺が見たことのない世界だ。これはどういうことだ?」

 マドラーでグラスの中の液体を撹拌しながら、ユーゴは質問した。

「それはねぶっちゃけ、ユー君、罠にかかっちゃったって感じかな」

「罠? 一体誰のだ?」

 グラスの汗を拭き取ってユーラウリアに渡しながら、ユーゴは眉根に皺を寄せた。

「ありがとー。誰のって、ウチらとは別の神々だよ。古い神々」

「……俺たちに干渉出来ないんじゃなかったのか? その古い神々って奴らは」

「厳密には、直接手出しは出来ないってことなんだけど、今回、古い神々あいつらが操作したのは、あっちの世界のシステムだったんだよね」

 とは、フィールエル達と出会った世界のことを指している。

古い神々あいつらは気付いたんだろうね。自分たちの邪魔している者がいるってことに。それで世界のシステムに勝手に干渉して、あの世界から移動しようとしたら、出口を古い神々あいつらが管理する世界テリトリーに引き込むようにしたんだよ。その方法だと、ほぼ確実に自分たちの邪魔する存在───つまりユー君を捉えられるからね」

「なんで、ほぼ確実なんだよ」

「だって、何の変哲もない存在に世界間の移動とか無理めでしょ」

「ああ、なるほど。神の力を借りたやつにしか世界間の移動はできない。出来たのなら、それは新しい神々おまえらの手の者で間違いないってことか。それで罠を張って手ぐすね引いて待ってたってわけだな。じゃあ俺の【幽世の渡航者ワンダフルダイバー】で違う世界に行こうとしても、移動出来ないのはなんでだ?」

「それも似たような理由。この世界のシステムで、この世界から出られないようになってるワケ。そもそもここはだからね」

「閉じられた……どういうことだ?」

 グラスを傾けたまま、ユーラウリアはすぐには答えない。
 どのように伝えるか迷っている。ユーゴにはそう見えた。

「この世界はすごく特殊なタイプでね。ループする仕組みになってるんだ」

「ループ……わからないな。音楽をループ再生するとかいうけど、それとは違うのか?」

「ううん。ほぼその通り。つまり、この世界はある時点Bまで時間が進むと、過去のある時点Aまで戻って、そこからまた時点Bまで進むっていう造りになってるんだよ」

「は?……つまり、何度も同じことを繰り返すってことか?」

「ちょっと違うけど、そういうこと」

「いったい、何のために?」

「実験のため、かな。ある条件の元で世界の中身がどう変化するのかを観察したら時間を戻して、条件を少し変えて今度は世界がどう変化するのかを観察する。それを何度も繰り返す。そういう世界なんだよ、ここは」

「マジ……かよ」

 女神の語るあまりの内容に、ユーゴはしばらく言葉が出なかった。
 世界の時間が急に過去に戻る。
 その現象がどのように起こるかユーゴには想像がつかないが、一つだけ想像できることがある。
 それは、ユーゴやフィールエル達、つまりループする時系列に途中から割り込んできた存在がループに巻き込まれた時、その存在は無事ではすまないだろうということだ。
 だからユーゴは、その時を知っているであろう女神に尋ねるのだ。

「その巻戻りが始まる時点ってのは、いつなんだ?」

 女神は瞼を閉じ、僅かに真剣な声を出して答える。

「もうそんなに時間はないよ」

「……どれくらいだ?」

 ゴクリと喉を鳴らしてユーゴは訊いた。

「あと……百年くらい」

「……女神との時間感覚の猛烈な隔たりを思い出したよ」

「え? あ、そっか。ユー君たちの寿命は余裕で超えるね」

 人間であるユーゴにとっては果てしない時間なのだが、永い時間を生きる女神にとっては百年などあっという間なのだ。
 
「まぁ時間に余裕があるのは安心したが、それで俺の問題が解決したわけじゃねーんだよな。なぁユーラ、お前の力で俺の【幽世の渡航者ワンダフルダイバー】を元に戻せないのか?」

「ごめん。それは今すぐには無理かな」

「なんだって?」

「だって、ウチにはこの世界のシステムの管理権限がないし。つまり、ユー君が世界間を移動できないのは、【幽世の渡航者ワンダフルダイバー】に問題があるわけじゃなくて、この世界のシステムに邪魔されてるからで、それを変更することがウチには出来ないんだよね。ごめん」

「おい、じゃあ俺たちはずっとこの世界にいなきゃなんねぇのか?」

 気色ばむユーゴを、「まぁまぁ、落ち着いてよ」と宥めながら女神は伝える。

「言ったでしょ? 今すぐには無理って。それをなんとかする為に、このユーラちゃんがわざわざこの身体を用意したんだから」

「この身体を用意? 何いってんの、お前。見たとこいつも通りだが?」

「それは後で説明するけど、それより、この身体でこの世界に降りて気付いたんだよね。たぶん、古い神々あいつらもこの世界に来ているかも」

 女神の口から更に衝撃的な事実が語られた。
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