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からくり奇譚 編

085. 紅白の姉弟機

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 全速力で空を掛けるスサノオとリッカ。
 やがてレーダーが敵機を補足した。

「いた。姉上、先手必勝でいきます」

「お願い」

大口径八連霊子キャノンヤマタノオロチ、発射」

 スサノオの背面、両腕両脚にある、計八つの砲門が回転し、両肩や両脇などから前面を向いて全てが火を吹いた。
 増幅した霊力を素とした光弾は、過たずに狙った八つの機体を全損させた。

「姉上。飛行ユニットヤタガラスを取り付けた機体があります。しかもかなり数が多い。拙者はこいつらを叩きます」

「分かったわ。では私は、地上の者共を担当しましょう」

 リッカのロングスカートのような装甲。その隙間から六角形の武器が六つ射出され、全てが宙に浮かんだ。
 雪がリッカ独自の、ある機能を作動させたのだ。

「吹雪、往きなさい」

 吹雪と名付けられた、六角形をした無線式飛行型の遠隔攻撃兵器は、六角形の角それぞれに銃口が取り付けられており、そこから霊子エネルギーの光弾を放った。
 ビュンビュンと回転し、光弾を連射。
 更に雪の脳波に感応して動く特別な金属【天通鉄】を用いているので、雪に意志によって縦横無尽に飛び回って敵機を撃破していく。
 こうして、スサノオとリッカは次々と敵機を沈めていった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ユーゴも空を飛べるのか。いやー知らなかったなぁ、ハハハ」

 真顔で白々しく言い放ったフィールエル。当然、嘘である。
 スエナの町でのやり取りは記憶に新しい。

「それで、どうやって飛ぶんだ?」

 ジト目のネルをごまかすため、フィールエルは話を進めた。

「こうやるんだ。───鬼神鎧装、起動」

 両手を胸の前で交差させると、ユーゴの肉体が変化し、黒く輝く異形の戦士へと成った。
 エクスブレイバーとなったユーゴは、さらに己の右胸にある鬼神核コアに命じた。

「来たれ───四神」

 その瞬間、【無限のシークレットもちゃ箱フロンティア】から、四種の装備が飛び出してきた。
 まず玄武。黒い角ばったブーツ様の装甲が両脚に。
 次に白虎。白い流線型の手甲が両前腕に
 更に朱雀。朱い金属の翼が背面に。
 終に青龍。青く大きな砲が二つ分かれて両肩に。
 それぞれ装着された。
 朱雀はバックパックとして背中に装着され、そこから大きな鳥のような、金属製の翼が接続されている。
 青龍は朱雀のバックパックから伸びたアームに接続され、一旦、ユーゴの背部に移動した。

「なんだか、一段と凶々し……いえ、強そうになりましたね」

「以前から思っていたが、お前の身体はどうなってるんだ、ユーゴ?」

 ぽかんとして、ネルもフィールエルも感想を述べた。どちらも悪気はない。

「凶々しいって何だよ……。前も言っただろ。こういう体質だよ。さぁいくぞ。ネル、少し下がってろ」

 朱雀の翼が広がり、羽の間にジェットスラスターが垣間見え、甲高い金属音が鳴り出した。

「じゃあ行ってくるぜ」

 ドンと地を蹴って天高く飛ぶ。
 ある程度の高度まで到達したら、推力を止めて一瞬の無重力状態になった時に、【宇宙遊泳リバティウイング】でユーゴ自身にかかる重力を無にした。
 擬似的にホバリング状態を作り出し、フィールエルを待つ。

「本当に飛行できるんだな。しかも本当に目立つ。ユーゴが使いたがらなかったわけだ」

 フィールエルが追いついてきて言った。
 つまらそうな顔をしているのは、ユーゴに合法的に抱きつく機会を一つ失ったからに違いない。

「なんだ。やっぱり憶えてるじゃねぇかよ」

「う……。いや、いま思い出したんだ」

「まぁどっちでもいい。行くぞ」

「ああ!」

 朱の翼と光の翼をはためかせ、二人は戦場へと翔んだ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「乙賀様! 栄山より入電。花ヶ浦の漁師が海で巨大な機巧人形を多数発見したとのことです」

 九能城の大広間には様々な機材が運び込まれ、臨時の作戦司令部と化していた。
 そこに乙賀尚勝以下、九能軍の主だった武将が集まっていた。

「何ぃ? 花ヶ浦に……どういうことだ?」

 花ヶ浦は栄山の南端にある海岸だ。

「なんでも、機巧武人が海を渡って花ヶ浦に向かっているそうです。進行速度は遅いようですが、上陸するのは時間の問題かと」

「莫迦な……水中での行動が可能な機巧武人だと。有り得ん。殿ですらまだ完成させていないのに」

 尚勝が信じられんと漏らすと、

「栄山の隠密映像班からの映像、来ます」

 大広間に臨時で設置したブラウン管のディスプレイがゆっくりと映像を映し出す。

「そ、そんな……」

 映像は砂浜をどこかの峠から望遠で映し出している。
 撮影者がカメラを右に振ると、沖合に黒い影がいくつも見えた。
 ズームアップされた画面には、機巧武人の頭部らしき部位が見える。

「何だ、あの機巧武人は……? あんな機体、殿は設計されてないぞ」

 冷や汗を流して戦慄く尚勝。

「海側は恐らく無警戒。まさか……殿達が向かった方は陽動でこちらが本命か……! いかん、殿たちに連絡を……いや、だめだ」

 連絡したところで、信衛たちに戦力を割く余裕はない。

「破損した機巧武人の修復はまだか!? 使える部品同士を組み合わせて、完成を急がせろ!」

「アタシが行くわ」

「え……?」

 焦りで怒鳴る尚勝に後ろから声がかけられた。
 振り返ったのは尚勝の目に写ったのは───

「パレア殿……?」

「アタシの海に、あんな物を勝手に持ち込んで……許せない。とっちめてやるわ」

 パレアの瞳は、珍しく怒りに燃えている。

「それは、どういう……?」

 しかしパレアは尚勝の質問には答えず、質問で返す。

「あの場所って、この国の南の浜よね。たぶん竜神岬の近く。昔、見たことあるわ」

「ええ、そうですが……」

「じゃあちょっと待ってなさい。あ、モナカは残しておきなさいよ」

「え? あ、待たれよ……」

 引き止める尚勝の言葉はパレアの耳に届かず、彼女は転移魔術で消え去った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 一瞬で花ヶ浦の浜に現れたパレアは、異空間から一条の三叉槍を取り出した。

「───アタシの力を、思い知りなさい」

 そして【冥海の魔王リヴァイアサン】は、その力を開放する。


──────to be continued

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