ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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千獣の魔王 編

055. 殲滅の光

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 冥海の魔王軍を撃退した後、砂浜にぶっ倒れたユーゴ。その腹の虫が鳴った。

「……メシ食うか」

 ユーゴひとりということもあり、無限のシークレットもちゃ箱フロンティアの入口を開けて入り、トレーラーハウス【オプティマス・デルタ】を目指す。
 ランドリーにジャケット以外の衣類を投げ込んで回した後、シャワーで汗を流した。
 ここはサービスシーンだろう。誰も得をしないが。
 さっぱりしたら次は食欲だ。
 インスタント味噌汁、カップ麺、冷凍ピザ、冷凍パスタ、フルーツの缶詰、牛乳、プロテインバーと、目についた食材を片っ端から腹に詰め込んだ。
 実はすぐにベルトガルドに戻って加勢しようかと思っていたユーゴだったが、それも一瞬のことですぐに考えを改めた。
 フィールエルたちは危険を承知でついてきた。
 ネルも黒魔女マリアのときと違い、守られるだけの存在ではない。
 ユーゴは彼女達を信じることにした。
 ならばユーゴの為すべきことは一つ。英気を養い、一刻も早く本調子に戻すことだ。
 ということで、洗面と歯磨きを終えてベッドに倒れ込んだユーゴは、すぐに意識が消えた。

「ん……ふぁぁ」

 爆睡から目覚めたユーゴ。身体の怠さも頭の重さも綺麗サッパリ消えていた。
 着替えて砂浜に戻ったユーゴは、どれくらい寝ていたのかが気になった。
 トレーラーハウスに時計はあるが、あの空間の中では役に立たない。外界と時間の流れが違うからだ。とはいえ誤差は数時間程度なのだが。
 千里眼で近くの町を見ると、避難していた住人はあらかた戻っているようだ。
 千里眼の範囲外なので、ベルトガルドの様子はここからでは判らない。
 ユーゴは幽世の渡航者ワンダフルダイバーで戻ることにした。
 
 ベルトガルドは激戦の最中にあったが、幸いにも町の中心までは魔族の侵攻を許していない。
 戦いはほとんどが空中戦だった。
 対空戦に挑めるものが限られているため、劣勢を強いられている。
 フィールエルが頑張っているが、流石にきつそうだ。
 更に遠くの空では、魔王二人がりあっている。
 丁度いい。
 ユーゴはあることを思いついた。

「おーい、リリー。俺だ、俺。こっちこっちー」

 少し離れた場所に、リリが救急箱を抱えて立っていた。

「あ……ユーゴ! 無事だったんだね」

「まぁな。冥海の魔王とかいうガキンチョは逃しちまったけどな」

 まったく下手こいたと、ユーゴは歯噛みした。

「いやいや。魔王を逃してちまったって、そんなセリフを言えるのは神様か神話の英雄くらいだよ」

「それより、あの空で戦ってるやつらに連絡取れるか?」

「え? 出来るはずだけど。戦闘員は全員通信用の魔道具を身に着けているから」

「そうか。じゃあ悪いけど、ちょっと伝言を頼めるか? 俺、いまからこの官邸の屋上に登るから、俺が合図したら全員退がれってさ」

「う、うん。わかった。司令部に伝えてくるね」

 重要なことだと直感が走ったリリ。駆け足で作戦司令部へ向かった。

「俺も準備するか……よっと」

 宇宙遊泳リバティウイングで自身の重力を軽くし、一足で屋上まで跳躍したユーゴ。
 空を見上げ、戦いの様子を眺める。
 大空にかかる黒い帯にも見える奏星の魔王軍のなかでは、フィールエルが暴れているお陰で、そこかしこで爆発が起こっている。
 その様子を見て、ユーゴは思った。───良い塩梅に固まっているな、と
 ユーゴは両手をクロスし、胸の前にかざす。

「鬼神鎧装。起動」

 黒い光とともに、エクスブレイバーへと変身したユーゴは、鬼神核に念じる。

「来たれ───【青龍】」

 無限のシークレットもちゃ箱フロンティアから長方形の兵装がせり出てくる。
 その兵器を右肩に担ぐと、その前部に収納されていたグリップとトリガーが出てきた。
 前方突端には二連の砲口。
 この兵装の名は青龍。
 玄武と同じく四神封印式究極兵装のひとつである。
 これもエクスブレイバー時にのみ使用が可能な、強力な兵装で、長距離の射程範囲を持つ大砲である。

「青龍。充気開始」

 ヴン、と重低音が鳴り、側面にあるゲージが溜まっていく。
 その間にニュー・オメガを左手に握り、銃口を空へ向けた。
 ピー。
 青龍のチャージが完了した音が鳴ったのを機に、バーストモードにしたニュー・オメガのトリガーを引いた。
 ドォン。
 誰もいない空間でオメガの光弾が爆発した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「なに……ユーゴが戻ったって?」

 左耳に突けた通信用魔道具から、ユーゴの伝言が報される。

「……了解だ。───いた」

 官邸の屋上にはたしかにユーゴの姿があった。しかし、何故かあの黒い鎧姿だ。
 彼は肩に、青い大きな物を抱えている。
 あれは───大砲か?
 フィールエルはその兵器を見た瞬間、

 ぞく。

 総毛立った。
 あれはやばい。危険なんて言葉は生易しい。
 それは本能の恐怖だったか、それとも天使からの警告だったのか。

「みんな、全力で戦闘区域から離れて防御壁を張れぇぇぇぇっ!」

 ドォンという、ユーゴが放ったニューオメガの合図で、フィールエルは喉が潰れるかと思うほど力の限り叫んだ。
 フィールエルやメナ・ジェンド獣王国の幹部達。空中戦をしていたもの達は、全力でその場を離れた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 

 カチリ。
 ユーゴが銃口を引いた。
 二つの砲口から解き放たれたエネルギーは渦巻く極大の光となり、やがてビルをも飲み込む大きさとなった。

「消え去れぇぇぇぇっ!」

 青龍が放つ息吹は、奏星の魔王軍の左端に到達した瞬間にその一割ほどを消し去った。
 魔人が消滅し、本来空が見えるはずの空隙には暗い暗闇が存在し、その周囲は青空と溶けあって背景が歪んでいた。
 トリガーを引き絞ったまま、ユーゴは砲口の狙いを右へずらしていった。
 わずか五秒の出来事。
 わずか五秒で奏星の魔王軍の約九割、四万五千弱の魔人が塵も残さずこの世界から消え去った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 リリを始め、地上にいたものは太陽が落ちてきたのかと思った。
 見上げると地上から空へ向かって、光の槍が昇っていた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「はぁ……はぁ……」

「ふぅ…ふぅ……」

 ベルタリオもグレンも、満身創痍で睨み合っていた。

「しぶといのう、貴様も……ん?」

「それはこちらのセリフ…………なんだ?」

 魔王二人は、異変に気付いた。
 少し離れた空域が、爆発したように光を放っている。
 グレンが振り向いた時には、魔人達の軍勢の殆どは消滅していた。

「はぁ?…………………はぁっ!?」

 自分の臣下は、部下はどこに消えた!?
 もしや地上で戦っているのかと魔力を探ったが、やはり自らの奏星の魔王軍は、殆ど残っていなかった。
 
「ユーゴか……何ということをしおる」

「ベルタリオ。貴様、あれが誰の仕業か分かっているのか!?」

「恐らく貴様も、私の官邸で会っているはずだぞ」

 グレンは思い出した。たしかにあの時、信じられないパラメーターを持ったバケモノめいた人間と会ったことを。

「あの人間か。まさか、ここまでとはな……」

「どうした? 急に覇気が失せたが」

「もういい。興が削がれた」

 決して張れぬと思っていた憎しみ。
 魔王でさえ不可能かつ出鱈目な青龍の一撃は、百年以上に及ぶ積年の憎悪すら吹き飛ばした。

──────to be continued

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