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eruption
when I decide②
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校門周辺には、予想以上の人だかりが出来ていた。
人衆のドーナツの外環部分は主に男子。遠巻きに、なんとか中心を見ようと奮闘している。
内側部分は主に女子で、キャアキャア言いながら盛んに中心にいる人物に話しかけている。
「ね~、不夜城になんの用なの~?てか~、どんな関係~?」
「ふふ、ごめんなさいね。それはちょっとゲンキ本人にしか話せないわ。関係はそうね……パパに話すと怒られるような関係かしら?」
意味深な発言に、聞いていた女子たちは「キャー‼︎」と興奮している。
おそらく初対面だろうに、よくもまぁズバズバとプライベートな質問ができるものだ。
そういえばコミュ力が高そうな女子ばかりが中心に集まっている。
「ちょっとごめん、通してくれ」
人熱を感じながら、人垣を押し分けて進む。
やがて中心に近づくと、
「あ、噂のダーリンじゃん」
などと聞こえてくる。やめてくれ。頼むから。
好奇と妬みの視線に晒されながら、俺は件の少女までたどり着いた。
「ハーイ。また会えて嬉しいわ、ダーリン」
「ハーイ。ちょうど俺も会いたかったんだ。聞きたいことがあるんだ」
レイラは柔やかに、俺は引き攣った笑みをそれぞれ浮かべながら再会した。
◆◇◆◇◆◇
夕刻の駅前は帰宅途中の学生、スーツ姿のサラリーマン、ビラ配りなどで賑わっていた。
昂星高校の最寄駅であるこのターミナル駅は、市内でも五指に入るほどの利用者を誇る。必然、飲食店などが立ち並び、俺は店探しに苦労せず手近なファストフード店に入った。
もちろん一人ではない。金髪の少女、レイラも同行している。
俺は定番のセット。彼女はアイスティーをそれぞれ注文して、奥の方のテーブル席に腰を落ち着けた。
「それで? どんな用件で俺を待ってたのか、まずそこから教えてくれ」
「そうね。まずは昨夜のお礼よ。助けてくれてありがとう。助かったわ。やっぱり日本人は親切ね」
「あれはただの成り行きだ。っていうか、日本語上手だな。成り行きって意味分かるか?」
「分かるわ。私は日本は初めてではないし、ちょっと理由があって日本は昔から慣れ親しんでいたわ。仕事にも必要だしね」
「仕事?」
レイラの年頃は見たところ十三、十四くらい。俺より年下だろう。
改めてレイラをよく見ると、かなり整った顔立ちをしている。
大きな碧眼には、星々のような煌めきがあり、すっと通った鼻筋や、可愛らしい唇にはピンクのグロスなのか艶があり、可憐な微笑みを浮かべている。
ふわっとウェービーな絹のような金髪はポニーテールにまとめられている。
洋服は胸元に大きなリボンとフリルがあしらわれた白のブラウスに、ワインレッドのスカートをシックに合わせたお嬢様っぽい服装だ。
道行く人々が全て振り返るほどの美貌とファッションの着こなしから推測すると、雑誌のモデルか何かだろうか?
モデルよりも先に女優やタレントの可能性を考えたが、あれだけ学校中で騒がれて誰も知らなかったのだから、その可能性は低いだろう。
「これよ」
そう言って小さなリボンがデザインされたパールホワイトのエナメルバッグから取り出したのは、文字入りのカードだった。そこには、
L.G.D RECORD JAPAN
PRODUCER
Laila McPherson
と書かれていた。
俺はそれを受け取って、矯めつ眇めつして見た。
そんな俺の表情を見て、レイラはクスッと笑った。
「何の冗談だろうって思っているわよね。まぁ仕方がないわ。でもこう見えて私、そこのプロディーサーをしているの」
そことはL.G.Dレコードのことだろう。L.G.Dレコードといえば主要先進国には必ずと言っていいほど支社があるメジャーレコード会社だ。
よく分からないが、それは凄いことではないだろうか。
「ふ~ん。まぁモデルや女優とかと一緒で、実力があれば務まるのか?」
「理解が早くて助かるわ。概ねその通りよ。ただし、コネクションはもちろんあるけどね」
「それで、そのプロデューサーのレイラさんは、きちんと昨夜のことを説明してくれるんだろうな」
「もちろん。それに昨日は、お礼も言わずに居なくなってごめんなさい。私にも事情があったの」
小首をかしげて謝るレイラ。
「それじゃ、その事情ってやつも込みで説明してくれるか? もちろん日本のスタンダードな男子高校生をすんなり納得させられる奴を、だ」
「そうね……」
と、彼女は左手を頤に当ててちょっと考える仕草をみせると、やおら意味不明な文言を呟いた。
『親愛なる貴方達。いつでも其処にいる貴方達。秘密の扉は此処にある。私と彼の内緒の話。
私は花を愛でるもの。お願い。少しだけ力を貸して』
果たして潮が引くように、周囲のざわめきが消えた。
「……は?」
店内にいるクルー、客、全員が一斉に口を止めたのかと思った。
だが、違う。声だけではない。
さっと周囲に視線を這わせると、誰も動きを止めていない。歩く音も包装紙を開ける音も、飲食の音も。
音という音が総じて消えたのだ。
「論より証拠って言うのでしょう?まず証拠から提示させてもらったわ。私は───」
ニヤリと彼女は不敵に、
───魔法使いよ。
そう言い放った。
小説追記文
──────to be continued
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お読みいただき誠にありがとうございます。
この作品が
「面白い」 「続きが読みたい」 「推してもいい」
と少しでも思って頂けた方は、
①お気に入り 登録
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アマチュアである作者は皆様に支えられております。
この作品を皆様で盛り上げて頂き、書籍化やコミカライズ、果てはアニメ化などに繋がればいいなと思います。
この作品を読者の皆様の手で育てて下さい。
そして「この作品は人気のない時から知ってたんだぜ?」とドヤって頂けることが夢です。
よろしくお願いいたします。
人衆のドーナツの外環部分は主に男子。遠巻きに、なんとか中心を見ようと奮闘している。
内側部分は主に女子で、キャアキャア言いながら盛んに中心にいる人物に話しかけている。
「ね~、不夜城になんの用なの~?てか~、どんな関係~?」
「ふふ、ごめんなさいね。それはちょっとゲンキ本人にしか話せないわ。関係はそうね……パパに話すと怒られるような関係かしら?」
意味深な発言に、聞いていた女子たちは「キャー‼︎」と興奮している。
おそらく初対面だろうに、よくもまぁズバズバとプライベートな質問ができるものだ。
そういえばコミュ力が高そうな女子ばかりが中心に集まっている。
「ちょっとごめん、通してくれ」
人熱を感じながら、人垣を押し分けて進む。
やがて中心に近づくと、
「あ、噂のダーリンじゃん」
などと聞こえてくる。やめてくれ。頼むから。
好奇と妬みの視線に晒されながら、俺は件の少女までたどり着いた。
「ハーイ。また会えて嬉しいわ、ダーリン」
「ハーイ。ちょうど俺も会いたかったんだ。聞きたいことがあるんだ」
レイラは柔やかに、俺は引き攣った笑みをそれぞれ浮かべながら再会した。
◆◇◆◇◆◇
夕刻の駅前は帰宅途中の学生、スーツ姿のサラリーマン、ビラ配りなどで賑わっていた。
昂星高校の最寄駅であるこのターミナル駅は、市内でも五指に入るほどの利用者を誇る。必然、飲食店などが立ち並び、俺は店探しに苦労せず手近なファストフード店に入った。
もちろん一人ではない。金髪の少女、レイラも同行している。
俺は定番のセット。彼女はアイスティーをそれぞれ注文して、奥の方のテーブル席に腰を落ち着けた。
「それで? どんな用件で俺を待ってたのか、まずそこから教えてくれ」
「そうね。まずは昨夜のお礼よ。助けてくれてありがとう。助かったわ。やっぱり日本人は親切ね」
「あれはただの成り行きだ。っていうか、日本語上手だな。成り行きって意味分かるか?」
「分かるわ。私は日本は初めてではないし、ちょっと理由があって日本は昔から慣れ親しんでいたわ。仕事にも必要だしね」
「仕事?」
レイラの年頃は見たところ十三、十四くらい。俺より年下だろう。
改めてレイラをよく見ると、かなり整った顔立ちをしている。
大きな碧眼には、星々のような煌めきがあり、すっと通った鼻筋や、可愛らしい唇にはピンクのグロスなのか艶があり、可憐な微笑みを浮かべている。
ふわっとウェービーな絹のような金髪はポニーテールにまとめられている。
洋服は胸元に大きなリボンとフリルがあしらわれた白のブラウスに、ワインレッドのスカートをシックに合わせたお嬢様っぽい服装だ。
道行く人々が全て振り返るほどの美貌とファッションの着こなしから推測すると、雑誌のモデルか何かだろうか?
モデルよりも先に女優やタレントの可能性を考えたが、あれだけ学校中で騒がれて誰も知らなかったのだから、その可能性は低いだろう。
「これよ」
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PRODUCER
Laila McPherson
と書かれていた。
俺はそれを受け取って、矯めつ眇めつして見た。
そんな俺の表情を見て、レイラはクスッと笑った。
「何の冗談だろうって思っているわよね。まぁ仕方がないわ。でもこう見えて私、そこのプロディーサーをしているの」
そことはL.G.Dレコードのことだろう。L.G.Dレコードといえば主要先進国には必ずと言っていいほど支社があるメジャーレコード会社だ。
よく分からないが、それは凄いことではないだろうか。
「ふ~ん。まぁモデルや女優とかと一緒で、実力があれば務まるのか?」
「理解が早くて助かるわ。概ねその通りよ。ただし、コネクションはもちろんあるけどね」
「それで、そのプロデューサーのレイラさんは、きちんと昨夜のことを説明してくれるんだろうな」
「もちろん。それに昨日は、お礼も言わずに居なくなってごめんなさい。私にも事情があったの」
小首をかしげて謝るレイラ。
「それじゃ、その事情ってやつも込みで説明してくれるか? もちろん日本のスタンダードな男子高校生をすんなり納得させられる奴を、だ」
「そうね……」
と、彼女は左手を頤に当ててちょっと考える仕草をみせると、やおら意味不明な文言を呟いた。
『親愛なる貴方達。いつでも其処にいる貴方達。秘密の扉は此処にある。私と彼の内緒の話。
私は花を愛でるもの。お願い。少しだけ力を貸して』
果たして潮が引くように、周囲のざわめきが消えた。
「……は?」
店内にいるクルー、客、全員が一斉に口を止めたのかと思った。
だが、違う。声だけではない。
さっと周囲に視線を這わせると、誰も動きを止めていない。歩く音も包装紙を開ける音も、飲食の音も。
音という音が総じて消えたのだ。
「論より証拠って言うのでしょう?まず証拠から提示させてもらったわ。私は───」
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