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chapter※12※※※※※※※※

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「朱鷺」

出張中に電話するつもりはなかったが、これは思わず電話した。

「どうして‘エグゼクティブ’?おかしいでしょ?しかも‘スタンダード’へ変更しようと思っても‘満室’って言えって言ったでしょ?今満室じゃないことくらいわかるんだけど?私は‘出張’で来たの、わかる?business tripだよ。朝からハイヤーは来るし…そりゃ…午後も使わせてもらったけど」
‘そうか、良かった’

朱鷺がふっと笑ったのが聞こえ、もう何を言っても無駄で、彼は私が吠えているのを楽しんで聞いているとわかり諦めた。

「ウェルカムフラワーがないわね」
‘その気づきを仕事に活かせよ’
「そっか…きるよ」
‘おいおい、もうきるのか?まあ、今の美鳥は仕事脳だからな。部屋くらいゆったりしていないと寝言で仕事するだろ?だからエグゼクティブでいいんだ’
「…ありがとう、朱鷺。完璧な配慮に感謝します」

急いで電話を終え‘ウェルカムフラワー’とメモする。

これまでのたくさんのホテル宿泊では、エグゼクティブ以上の部屋や女性客などいろいろな限定がありながらも小ぶりのフラワーアレンジメントにwelcome cardが添えられていることも多かった。

パソコンを立ち上げ髪をまとめると、ふと自分の手からいちごの香りがしてもう一度確かめる。
手は洗ったのにまだ残る香りに植物のパワーを感じ

「フレッシュなバジルもいちごも…少しのワインも…体にいいものいっぱいだ」

と嬉しくなる。
これだけで非日常と言える半日だけどリゾートホテルとしての良さを加味していかないといけないんだよね、と朱鷺の顔を思い浮かべた。
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