手を伸ばした先にいるのは誰ですか～愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる～【完結】

chapter※08※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「考えたら何か分かったってこと？」
‘考えたら…お仕事で‘お願いします’とお願いする相手に、その前後に親しく名前で呼び合ったりデートするって良くないかなと感じるんです’
「前にも言ったけど公私混同はしないよ？」
‘はい…でも、例えば…今回の企画が、もしもオークワイナリーさんでなく他のワイナリーさんに決定した時…その後にプライベートで会えば、どうして他のワイナリーになったのかと…一言でも私に聞かれると思うんです’
「なるほど…それはもう公私混同していると思う？」
‘そうですね…聞かれて答えに困ることも困るし…’
「美鳥は友達とお互いの仕事の話をすることはない？」
‘…あります’
「うん、あるだろ？その程度の仕事の話なら日常会話ということだね。聞く方も話す方もお互いに守秘義務や機密事項に触れない程度には仕事の話もするものだと思うよ」
‘はい…’
「仕事の話を全くしない不自然さも、相手が困るような聞き出しも、どちらもスマートじゃないな。そんなことをするつもはないよ、今もこれからも。見極めが難しいところだが、仕事の話イコール公私混同ではないと思う。仕事で成功した話を聞いて一緒に喜び、失敗した話を聞いて慰め励ますのは自然な会話だよ。企画内容を先にリークするとなると公私混同ということだけど、そんなことしないし聞き出そうとも思わない」

初デートと言っていたし、初企画でもあるからこの部分について考え込んでしまったか？

蜷川社長は美鳥への雑言を気にしていたが、美鳥は公私混同が気になっているということか…

「想像するのではなく、経験してみない？」
‘経験…？’
「何より、俺は美鳥といて楽しいし、表情豊かに話す美鳥が好きだからまた会いたい」
‘…’
「こうして電話もする…ひとつだけ聞いていい？」
‘…はい’
「俺とプライベートで連絡を取ったことやデートしたことを蜷川社長やお父さんから何か言われた？言われたなら、それは美鳥に向けられるべきじゃない言葉で俺がそちらへ伺って聞くから」
‘一言も…言われるどころか…聞きもされていないです’
「二人とも？遠藤さんは？」
‘いえ、全く…3人から一切の質問もないです’
「一緒に食事したり飲んだりしているのに？」
‘ありません’
「…不自然なほどだね…静かな食事なのか？」
‘一気に考えるな、とは言われたけれど…柏木専務とどうこうとは本当に一言も誰からも聞かれていないです。普通にたくさん話しながら食べていますけど…’

どういうことだ？

どうやって知り合ったのか、外で会ったのか否か、美鳥はどう思っているのか…普通は聞くんじゃないのか？
目の前であれだけ話したあとだぞ？
蜷川親子揃って俺は眼中にないということか？

それなら…ある意味屈辱的だな。