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chapter※08※※※※※※※※※※※※※※

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遠藤さんをお待たせしていた車へ乗り込み屋敷へ向かう。

静かな車内で、何となく目に入った隣の朱鷺の手にふと触れたい気がして…慌てて窓の外を見た。

今触れたいなんておかしいでしょ?昨夜からいろいろ考え過ぎているのかもしれない…頭がショートしたんだね。

「夕食何かな…」
「俺も同じこと考えてた」
「うん」

そのまま何も話さず屋敷へ到着したが嫌な沈黙ではない。

「よし。朱鷺、勝負だね」
「美鳥様、私に合言葉を教えていただければ美鳥様の方へ1票…」
「あははっ…遠藤さん、こそっと言ってくれなきゃ…朱鷺の前じゃないですか」

遠藤さんの冗談に笑いながら

「ありがとうございます。またすぐあとで」

と朱鷺と先に車から降りる。そして二人並んで入った屋敷内では

「食事前に話がある、朱鷺。美鳥も一緒に聞いてくれ」

旦那様が私たちを待ち構えていた。

「朱鷺に見合いの話がきた」
「くだらない話だな、断る」

旦那様の言葉尻に被せるように即答した朱鷺は座ったばかりのソファーから立ち上がる。

「仲介者がいる正式な申込みだ」
「なら、使者を立てて正式に断る」
「相手は日都銀行頭取の娘さんだ」
「相手は誰でも関係なく断る」

もう部屋を出る勢いでドアを開けている朱鷺の向こうから遠藤さんがそっと顔を出した。

「遠藤くんも入って。朱鷺ももう一度座って」
「失礼します」

遠藤さんが部屋に入り、朱鷺も仕方なくもう一度私の隣に座った。

旦那様が豪奢な写真台紙を広げてテーブルへ置くと

「会ったことがあるのか?」

と朱鷺へ聞く。Ninagawaのメインバンク日都銀行。その頭取令嬢…綺麗な人だな…

「設立100年のパーティーで会った。その時‘取引先など仕事関係者との付き合いはしない’と断ったのになぜこんなものがくる?」
「そんな立ち話ではなくこうして正式に申込みがきたということだな」
「正式に断るだけだな」

最初と変わらないきっぱりとした朱鷺の声を聞きながら、正式な申込みを断るって大丈夫なの?と思うと同時に、朱鷺が誰かと結婚するということを初めて想像してみた。

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