手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ

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chapter※08※※※※※※※※※※※※※

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朱鷺も遠藤さんも昨夜から今日まで一度も龍のことを私に聞きもしない。

一晩考えて、まず朱鷺の言ったことは昨夜よりも今の方が理解できる。
蜷川美鳥だから言われるあれこれプラス、取引先専務と付き合っているとなると色恋を取り沙汰されて、社内はもちろん全く関係ない人たちの噂の的となることを心配してくれているんだ。

私もそれは避けたい…知らない人の好奇の目は怖い。

大人になった今は、私が小さい時に経験したそれよりも遥かに下劣で卑劣なやり取りを見聞きすることになるだろう。
小さい時のあれは、もらわれた子を挟んで‘可愛いでしょ?’‘可愛いですわ’‘大切にしてるのよ’‘さすが蜷川様’と言いながら経済活動をしていただけ。

今は蜷川のやり方の全てが色恋とも言われかねない。

それから、そういう類いの噂で川崎さんとの企画が純粋に評価されなくなることも避けたい。

その2つは今朝までに考えていた。

そして龍…会いたいと言われて嬉しかった。
一緒に過ごした一日を思い起こしても、とても楽しくて心臓と頭が忙しい一日だった。
ドキドキして、朱鷺の顔が思い浮かんで…好きを飲み込んだんだよね。

さらに朱鷺…昨日のくしゃくしゃも今朝のわしゃわしゃも、朱鷺と私の間では慣れている行為なのにトクンとする。
今まではしなかったんだけどな…

私にはドキドキやトクンを解読する術はない。
確かなのは龍との会話は楽しく、朱鷺は絶対的な安心感があること。

「…美鳥」
「うん?」
「何度も呼んだのに…そんな一気に考えなくていい」
「あ…ごめん」
「もう西田も帰ったし、遠藤も車で待ってる」
「あぁ…ほんとごめんなさい」
「問題ない。帰って俺と勝負だろ?遠慮しないからな」

朱鷺はそう笑うだけで、ここでも龍のことを聞かず、自分の考えを言うわけでもなく、ただ私に十分時間をくれるようだった。
以前の彼なら、私の頭の中も心の中も見透かして言葉をかけただろうが…大きく変化した朱鷺を見つめると

「くしゃくしゃかわしゃわしゃするか?」

と両方の手のひらをグーパーして見せてくる。
その子どものような仕草が可笑しくて声を上げて笑ってしまった。
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