手を伸ばした先にいるのは誰ですか～愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる～【完結】

chapter※05※※※※※※

だんだんと言葉も砕けてきた美鳥の軽快なテンポの話を聞く。

「兄って言わないのは海外では普通なんじゃない？今は蜷川社長でもないしそのままで大丈夫だよ。よほど美鳥が心配だったのか、彼から見て無理なプランニングをしていたのか、かな？」
「どっちも正解。私がヨーロッパを旅行する時はそうでもなかったのに日本の方が心配って失礼だと思わない？一応日本人なのに、私」
「その時はまだイギリス人みたいだったんじゃない？」
「そうかも…」
「あと、北海道は車でないと移動が難しいからね」
「その通りでね、友人と合流したらドライバーから日程表を渡されてまた驚いて、そこに私達が行きたいって言ってたところが全て組み込まれていてまた驚いて呆れたわ。もちろん全て英語で、ドライバーも英語を話すの」
「蜷川社長はNinagawaのツアー会社も立ち上げられるんじゃない？」

それに声を上げて笑う彼女は、ホテルでの凛とした姿勢の美しさと別の柔らかい雰囲気を醸し出している。

「美鳥の持つ雰囲気というか、放つ雰囲気は…この部屋の空気を綺麗にして俺の呼吸も深くリラックスできるものにする感じだね」
「…空気清浄機？」
「一緒にいると俺はそうだね」
「フィルターが汚れて目詰まりしてることがあるかも？」
「ははっ、その時はアルコール消毒しようか？」

そう言って最後のワインはボトルで置いてもらっているのを軽く振って見せる。

「アルコール消毒、ふふっ…14%とかで効果あるかしら？」
「それもそうだな」

ここでも軽快な返答が楽しい。