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chapter※03※※※※※※※※※※※※※※

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「美鳥さん?」
‘こんばんは、柏木専務。本日はありがとうございました’

蜷川朱鷺の秘書のままの蜷川美鳥を誘うつもりはない。
その意思表示と、かけてもらうよりこちらからかけようという意図で通話をプチッと切ってから、リダイアルした。



「ビジネスの番号ではその20歳以降の努力の賜物の日本語を存分に披露してくれる?俺も気づいた点は指摘するようにする」
‘とてもありがたいです’
「うん。でもこの番号ではその‘です’も必要ないね?幼稚であろうが素の美鳥さんでないと…」
‘切ります?’
「そういうこと」
‘…難問です’
「うん?」
‘日本人の言葉と心の裏腹…対面では瞳の動きを見ているので読み取りやすいと思うんですけど…電話では難しいです’
「言葉通りだけどね…ビジネスの駆け引きでもあるまいし」
‘でた…言葉通りと言いながらお腹ん中‘まっくろくろすけ’’
「ぶっ…わっはっ…ジブリ?」
‘はい、ジブリは日本語のバイブルでディズニーが英語のバイブルです’
「あーディズニーと言えば…美鳥さんの髪に飾りをつけたらラプン◯ェルだと思っていたんだ」
‘Wow…正解です。あとはベル風のどちらかですね’
「美女と野獣?」
‘柏木専務はディズニー好きですか?’
「…聞こえなかった」
‘専務か…きびしー…っと…柏木さん?’
「今日だけで4人会わなかった?」
‘…その通りです’
「だったら?ファーストネーム呼びは得意でしょ?美鳥って俺が先に呼ぶべき?」

思った以上に軽快だな、彼女との会話は。


「美鳥」
‘…えっとですね…ちょっとよろしいでしょうか?’
「よろしいですよ?」
‘あの…ファーストコンタクトがビジネスで今後もビジネスのお付き合いの可能性がある…’
「そう願っていますが…」
‘…やっぱり柏木さん以外の選択肢はないような気がします’
「気のせいじゃない?」
‘…’
「Stereotypes Prejudice」
‘わ…一番やだ’
「その調子。今後のビジネスなんてあってもなくても今こうしてプライベートで電話してるんだから」
‘…龍之介さんでいいですか?’
「ふっ…美鳥が長ったらしくて嫌でなければ」
‘イギリスで会っていれば龍って呼んでいましたね…間違いなく’
「今もいいと思うよ?」
‘Ryu…’
「ん?」
‘ディズニー好きなの?’
「ははっ、そこからだね。姪っこ…姉の子なんだけどたまに会うといつもディズニー映画を観てるんだよ。特にラプンツェルがお気に入り」
‘小さい時にお友達になりたかったかも…’
「もう2年生だよ」
‘今でも気が合いそうです’
「髪をプリンセスみたいに編んでって姉に言うんだって。で、いろんな動画を見てチャレンジしたけど出来ないって言ってた」
‘子どもは毛量が少ないし、すごくストレートだと難しいですね’
「その苦労は体験済み?」
‘…お手伝いさんが’
「今もやってもらってる?」
‘いえいえ、帰国後は一人で生活しています’

お手伝いさんがいる生活を22歳まではしていたということになるが、甘ったれることなく自立している印象だ。
父の年代の者は皆、美鳥が養子縁組されて蜷川になったことを知っているようで俺も先日聞いた。
だから、蜷川朱鷺と美鳥が全く似ていなくても社交の場でそれを口にする者はいないという。
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