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chapter※03※※※※

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「喜んで。あとお試しになりたいものや、お好みは?」
「白の黄色…こんな言い方でわかりますか?」
「わかりますよ。川崎さんとはお好みが違うようですね」
「そうなんですか?」
「白の黄色とおっしゃるのは、程好く熟成が進んだ黄金色のことだと…こういった」

俺がグラスに白ワインを注いで見せると

「そうです。こういう色の白ワインを美味しいと思うことが多いんです」
「川崎さんのお好みは若いワインなのでこういう色はでないですね。あとは、暖かい気候で育ったブドウの方が黄色っぽくなる傾向もありますが品種にもよるので一概には言えません」
「あ…私、フランスのワインよりイタリアやスペインのワインの方が好きかもしれない」
「より暖かい地域のワインですね」
「シチリア産なんてとっても美味しい…あっ…ごめんなさい。他のワインをすごく誉めちゃいました」
「構いません。私もいろんなワインを美味しく飲みますし、他のアルコールも飲みますから…どうぞ」

美鳥さんは小さく頷いてから一口ワインを口に含んで一呼吸おいてからコクンと飲み込む。

「美味しい…ちょっと甘いかな?」
「では、水を一口飲まれてから…こちらを」

次に注いだ白ワインも色は同じだが

「こちらの方が好きです」
「美鳥さんのお好みが分かってきました」
「そうですか?もう最後かな…赤の渋みはないけど粘りのあるものがいいです」
「やはり…温暖な地域の特徴ですね。うちも苦手というか遅れている分野ではあるんです」

彼女と赤ワインの前に移動しながら話す。

「ワインの粘性は主にアルコール度数の高さに由来するんです。アルコールのもととなる果実の糖度が上がりやすい温暖な地域で造られたワインは自然とアルコール度数が高くなるので粘性がでやすい。ですからうちの農園のブドウでは難しいんです。こちらが100%うちのワイン、こちらは輸入ブドウからうちで作ったワインです」

ふたつのグラスを彼女に渡すと、彼女は器用に両方のグラスを回して

「ああ…この見た目でも粘性が少し違うのがわかります」
「美鳥さん、ワインの扱いがプロですね?」
「私、誉められました?」
「誉めました」
「ありがとうございます。今度バーで潜入業務しようかな…いただきます」

ふたつのグラスを交互に傾けたあと美鳥さんは、俺とテーブルの向こうにいる営業社員を見て言った。

「気候はオークワイナリーさんにどうしようもありませんものね。どちらもとても美味しいです。ブドウに感謝したくなる味です。ごちそうさまでした」

グラスを置いた彼女は

「柏木社長はどちらに…いらっしゃいました。ご挨拶して来ます。柏木専務、ありがとうございました。新しい知識が増えてとても楽しくて、ますますワインが好きになりました。失礼します」

そう言って美しくお辞儀をして見せる。

ますますワインが好き…

「最高の誉め言葉を頂きました。ありがとうございます。今度はワインペアリングをしてみませんか?」

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