手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ

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試飲会当日、Ninagawa側の参加者は一室に集められた。

「Ninagawa直属スタッフはもちろん、出店していただいている全飲食店の皆さんが主導権を握る形で、妥協することなくいい取引が開始出来るならばサポートしていきます。オークワイナリーからの申し出をそのまま受ける必要はありません。国産ワインは他にもあるので今日の試飲会イコール、オークワイナリーとの契約と考えず今後の企画の参考にしてもらえたらいい。最終的にこちらの数字が上がる企画、取引にして下さい。何ヵ月かかっても、何年かかっても構いません。もう一度言いますが、妥協のないいい取引をお願い致します」
「「「「「「「はい」」」」」」」

朱鷺の言葉に皆が頷く。

「私も柏木様へ挨拶には行きますが、私や蜷川に遠慮や配慮はいりません。何ひとつ取引が成立しなくても私は困らないので、それぞれの立場で思い切り好きに交渉して下さい。何しろあちらは全役員が参加らしいですから、それをうまく利用するのも手です。ただただワインを楽しむのも良しです」

ここで笑い声が起こり

「では、よろしくお願いいたします」

朱鷺がコンシェルジュ並みの美しいお辞儀をして解散となった。

「美鳥」
「はい」
「こちら遠藤支配人。あと2ヶ月もしないうちに執務室に入ってもらう」

解散後、その場に残った遠藤支配人を朱鷺が紹介してくれる。

「はじめまして、蜷川美鳥です。よろしくお願いいたします」
「美鳥様…はじめましてではないんですよ。私が2年間蜷川の屋敷で働かせて頂いた2年目に美鳥様が屋敷にいらっしゃったので、小さな…あまり食事をなさらない美鳥様を存じ上げております」
「あ…お久しぶりです?…ごめんなさい、覚えてなくて」
「ははっ、当然ですよ。これからよろしくお願いいたします」

お辞儀をし合ってから

「朱鷺はその…若い遠藤支配人を覚えているの?」
「ああ。俺が10歳で遠藤支配人が22って感じだったから覚えている」

朱鷺と話すと遠藤支配人が口を挟んだ。

「もう支配人呼びはやめていただいてもよろしいかと…」
「それでは遠藤さん、で」
「はい、美鳥様」
「…それは‘様’なんですね…」
「西田さんもそうでしょう?」
「そうですね…」
「それに蜷川当主付きという立場になりますから今後は‘朱鷺様’という呼び方も復活です」

ややこしいけれど、そうなるんだね…そこで私のスマホが鳴る。
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