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chapter※02※※※※※※※※※

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冴子さんに電話すると、喜んでいらっしゃいと言ってくれた。
2日間一人で食べるつもりで鶏肉入りの煮しめだけ作ってあるらしい。

‘美鳥様の到着までには、もう少し何か作っておきますから真っ直ぐ来てください’

そのお言葉に甘えることにするが、タクシーに乗る前にホテルのカフェで冴子さんの好きなティラミスを買う。
ホテル前からタクシーに乗り20分ほどで西田邸に到着すると、冴子さんが退職後に飼い始めたマルチーズの‘チーズ’に出迎えられた。

「西田からさっき連絡がありました。美鳥様が朱鷺様の留守を守る優秀な秘書になられたととても喜んでいましたよ」

チーズをケージに入れながら冴子さんが言うので

「西田さんのおかげです。で、お夕飯までここでいただくという…ふふっ、ありがとうございます。ティラミス、デザートにどうぞ」
「ありがとうございます。買ってきて下さるかなぁ、でもこの時間にはもうないかなぁと思っていました、うふふ」
「平日なんで何とかこの2個だけありました。この時間に売り切れるだなんてNinagawaのスタッフは優秀ですよね。計算し尽くしている」

とケーキの箱を手渡す。

「そうですね。そうしてスタッフさんのことを思える美鳥様が素晴らしいと思いますよ」
「今日はよく誉められる日だわ、チーズ。今度はチーズのおやつも買ってくるね」

私が手を伸ばしてケージの中のチーズを撫でると、彼女はクイッと頭を避けて私の手をペロペロ舐めた。

「熱々のだし巻き玉子って贅沢な気分になって大好き」
「豚肉メニューではありませんでしたが、喜んでいただけて良かったです」
「私、冴子さんの料理で嫌いなものって小さい時からないよね?」
「そうですね…最初の1年、5、6歳の頃の食が細かったことぐらいしか困ったことはありませんね」
「冴子さんの料理でここまで育ちましたぁ、ありがとう。乾杯」

日本の家庭料理とロゼワインがよく合うというのが西田夫妻の見解で、私もそう思う。出汁の旨味や醤油やみそなどの発酵調味料の優しい味わいが、ロゼワインの柔らかな味わいとマッチするのだ。
あとはスパークリングワインも合うが、今日はロゼで乾杯している。

カニ缶、きゅうり、かいわれ菜、ワカメを混ぜ合わせて器に盛り、ショウガを乗せたカニの酢の物も美味しい。

「この間、旦那様と出掛けた時に思ったんだけど…私、すごくたくさんのお父さんがいるんですよね」

冴子さんには丁寧語など言葉がごちゃっと混じってしまうのは昔からだ。

「お父さんと呼ばれるのは田代さんと、時々旦那様だけですけれど」
「そうなの。でも戸籍上の蜷川の父がいて、西田さんも…私からすれば半分はお父さんなんですよね。イギリスでもあれだけ毎日送迎してもらって勉強を見てもらって、よくmuseumに連れて行ってもらって父の役目をしてくれてたと思うから」
「泣いて喜びますよ」
「お母さんも同じです。戸籍上の母がいて…奥様はちょっと違うって子ども心に思っていたので、冴子さんの二人ですね」
「西田と後悔したこともあるんです。田代さんが亡くなったとき私たちが美鳥様を引き取れば良かったと…」

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