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chapter※02※

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美鳥は本当に思ったことを言っている。
彼女は一切悪くない。
その根本こんぽんに自分は蜷川に世話になった子という負い目があることが問題なんだ。


俺が美鳥を手放すわけはないが、彼女は

「旦那様と一緒に買い物と食事へ行く」

など言って父と出掛け、そのまま屋敷に泊まったりして、今週はマンションで一人になる機会を減らしているようだが、ずっと屋敷にいるわけはないから静観する。

グアムでゴルフ三昧の1ヶ月を過ごしたあとの父も美鳥と会うのが嬉しいようだからかまわない。

仕事はもちろん変わりなくこなしているので問題はない。



「朱鷺、佐井友理奈さんって本当に知らない?この前、朱鷺宛のメールを無視しろって言ったから放置していたけど、今度は私宛で来た…私も会ったことあるの?」
「美鳥様、見かけただけで‘会った’と言う人間もいますからね。先方の言い分を鵜呑みにしてはいけません」
「はい」

代表アドレスに送られてくる登録のない新規メールは俺宛であっても美鳥と西田が処理する。
必要かと思う案件であれば、俺や各部門に転送する。

「西田さん、この方ですって…ご存知ですか?イギリスで会ってます?」

パソコンから顔を上げてタブレットを持った美鳥が西田にそれを見せると

「見覚えはございませんね。これを見るに…とても有名な美容家なのですか?」
「さあ?私はお名前も知らなかった…こういう情報に疎いんですよね」

そう言いながら美鳥が立ち上がり

「一応、朱鷺も見て」

とタブレットを俺に向けた。

「知らない。これ誰?顔変えてたら見覚えもないよな?西田」
「さすが朱鷺様。ごもっともです」
「えー2回も連絡あったのを無視でいいの?私のこと知っている風に書かれているのに」
「美鳥様が恨みを買ってはいけませんからね。私から返信しておきます」
「西田さん、すみません。お願いします」

蜷川に取り入ろうとする人間は、常にいる。
今回もその類だろうと、俺は気にもならなかった。

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