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他人の介入

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「香り、気になるね」

 小さな声でそう言いながら私の前のトレイを持った並木さんは、カウンターの向こうへとそれを運ぶ。そしてコップに水を入れて戻ってきた。

「どっちが答えてくれてもいいんだよ?」

 瑛人と美琴さんに言うなら、瑛人の向こう側に座ればいいのに。

「美琴さんには、日曜日に偶然会ったんです」
「へぇ…偶然会ったら自分の彼女の言動を報告するんだ」
「並木さんこそ、皮肉めいた物言いをされますよね?バレンタインの日には話しましたけど、俺と香歩のことに首を突っ込んで欲しいとは言っていません」
「ふっ…今の発言で完全に君と吉田さんVS俺と香歩ちゃんの構図が出来たね。俺は大歓迎」

 並木さんは愉しそうにそう言うと、自分の水の入ったグラスを私の湯飲みにコツンと当てた。

「香歩&千紘チーム、頑張ろうね。好きなこと言って大丈夫だよ。俺が全部拾って効果的なボムにして投げてやる」
「…状況がよくわからないけど…ボムって…私、喧嘩したいわけではないんですけど…」
「そうだろうね。優しさと思いやりが言動の端々に表れているから…でも喧嘩するのは悪いことではないし、恐れることでもない。家族や親友と喧嘩しても仲直りは出来るでしょ?その仲直りの努力も一種の愛だよ。だから恐れることはないよ」

 その並木さんにカウンターの向こう側から問いかけがある。

「瑛ちゃんの言ったことがどうして‘VS’の構図になるのかわからない…」
「‘並木さんこそ、皮肉めいた物言いをされますよね?’これは俺がついさっき吉田さんに言ったことへの当てつけ。つまり‘えいちゃん’は吉田さんに加担すると宣戦布告したわけだ」
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