83 / 120
パトスへの光 5
しおりを挟む
「アルコールを飲まない?」
「飲まない」
「ノンアルコールカクテルもあるけど、ジュースも避けたいですよね?」
「一番避けたい」
場違いな私の返事に兄は驚くこともなく
「グレープフルーツのフレッシュジュースを絞ってもらうか、炭酸レモン水はどうでしょう?」
と提案してくれる。
「グレープフルーツにする」
「ナッツは体にいいですね?」
「うん」
あとは兄に任せておけばいい。私は席からフロアを見渡し、たくさんの人がその場で肩を揺らし談笑し、手を取り合って自由にジャンプして大声で笑っている様子を眺める。たまに、ダンスのステップを練習している人もいる。友人と互いに見せ合ったり…ふふっ…曲が変わってリズムが変わると一気にめちゃくちゃになって笑い転げてる。で、諦めたのか1、2、3、4の4の音で高くジャンプするという動作を彼らが繰り返し始めると、それが周りに派生して、同じタイミングでジャンプや‘ハイッ’という掛け声がフロアで揃い始めた。
「アハハ…グラス持った人も器用だね」
「濡れても分からないくらいハイなんじゃないですか?」
「楽しそう」
「はい」
「…私は…ずっとダンスしてきたんだけど…」
「そうですね。極めたというレベルです」
「うん…でもその極めたはずのダンスにも…こういう…なんて言うんだろう…外側があるのかもしれないね…」
多くの人が一斉に声を上げてジャンプして空気を大きく揺らすのを感じながら、ふとビールの瓶に口をつけた兄と目が合う。
「私にはまだまだ知らないことがたっくさん…だね」
「楽しみがたくさんですね」
そうだね…楽しみがたくさん…
「お兄ちゃん、行く?私、ちょっと混じってくるよ」
「ごゆっくり。ここで見てます。緒方が来るかもしれないので」
「そうなの?」
「俺が出て来るのが珍しいので…たぶん」
「そっか、そっか」
そう言って立ち上がった時には、気分が少し上がっていて
「いってきます」
座ったままの兄に手を向けてハイタッチをしてから通路を渡り、フロアに立って自分のスペースを…
ん?これ…フロア素材が変わってる。
「飲まない」
「ノンアルコールカクテルもあるけど、ジュースも避けたいですよね?」
「一番避けたい」
場違いな私の返事に兄は驚くこともなく
「グレープフルーツのフレッシュジュースを絞ってもらうか、炭酸レモン水はどうでしょう?」
と提案してくれる。
「グレープフルーツにする」
「ナッツは体にいいですね?」
「うん」
あとは兄に任せておけばいい。私は席からフロアを見渡し、たくさんの人がその場で肩を揺らし談笑し、手を取り合って自由にジャンプして大声で笑っている様子を眺める。たまに、ダンスのステップを練習している人もいる。友人と互いに見せ合ったり…ふふっ…曲が変わってリズムが変わると一気にめちゃくちゃになって笑い転げてる。で、諦めたのか1、2、3、4の4の音で高くジャンプするという動作を彼らが繰り返し始めると、それが周りに派生して、同じタイミングでジャンプや‘ハイッ’という掛け声がフロアで揃い始めた。
「アハハ…グラス持った人も器用だね」
「濡れても分からないくらいハイなんじゃないですか?」
「楽しそう」
「はい」
「…私は…ずっとダンスしてきたんだけど…」
「そうですね。極めたというレベルです」
「うん…でもその極めたはずのダンスにも…こういう…なんて言うんだろう…外側があるのかもしれないね…」
多くの人が一斉に声を上げてジャンプして空気を大きく揺らすのを感じながら、ふとビールの瓶に口をつけた兄と目が合う。
「私にはまだまだ知らないことがたっくさん…だね」
「楽しみがたくさんですね」
そうだね…楽しみがたくさん…
「お兄ちゃん、行く?私、ちょっと混じってくるよ」
「ごゆっくり。ここで見てます。緒方が来るかもしれないので」
「そうなの?」
「俺が出て来るのが珍しいので…たぶん」
「そっか、そっか」
そう言って立ち上がった時には、気分が少し上がっていて
「いってきます」
座ったままの兄に手を向けてハイタッチをしてから通路を渡り、フロアに立って自分のスペースを…
ん?これ…フロア素材が変わってる。
48
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
俺様な極道の御曹司とまったりイチャイチャ溺愛生活
那珂田かな
恋愛
高地柚子(たかちゆずこ)は天涯孤独の身の上。母はすでに亡く、父は音信不通。
それでも大学に通いながら、夜はユズカという名で、ホステスとして生活費を稼ぐ日々を送っていた。
そんなある日、槇村彰吾(まきむらしょうご)という男性が店に現れた。
「お前の父には世話になった。これから俺がお前の面倒を見てやる」
男の職業は、なんとヤクザ。
そんな男に柚子は言い放つ。
「あなたに面倒見てもらう必要なんてない!」
オレサマな極道の若と、しっかり者だけどどこか抜けてる女の子との、チグハグ恋愛模様が始まります。
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
S系イケメン弁護士の攻めが酷すぎる
嵩矢みこよ
恋愛
R18、BL要素若干あり。
Sな男に翻弄されてばかりの、少しばかりハードボイルドな話。
エロ描写不可な方はご遠慮ください。
浅羽澪は議員の父と女優の母を持つ大学生。
父親の専任弁護士が変更となり、新しく専任になった四ノ宮楓に警戒心しか持てない。
顔がいいだけのお飾りならともかく、余裕のある態度と隙のなさが釈然としない。
ある日友人である大葉と花火大会に行くと、四ノ宮は澪を尾行し、大葉との関係をしつこく聞いてくる。
この男の目的が何なのか、澪は計れずにいた。
突然口付けて、いやらしく身体を弄ぶ四ノ宮に抵抗できない。
四ノ宮は危険な男だ。わかっているのに、四ノ宮の腕から逃げることができず…。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
【続】18禁の乙女ゲームから現実へ~常に義兄弟にエッチな事されてる私。
KUMA
恋愛
※続けて書こうと思ったのですが、ゲームと分けた方が面白いと思って続編です。※
前回までの話
18禁の乙女エロゲームの悪役令嬢のローズマリアは知らないうち新しいルート義兄弟からの監禁調教ルートへ突入途中王子の監禁調教もあったが義兄弟の頭脳勝ちで…ローズマリアは快楽淫乱ENDにと思った。
だが事故に遭ってずっと眠っていて、それは転生ではなく夢世界だった。
ある意味良かったのか悪かったのか分からないが…
万李唖は本当の自分の体に、戻れたがローズマリアの淫乱な体の感覚が忘れられずにBLゲーム最中1人でエッチな事を…
それが元で同居中の義兄弟からエッチな事をされついに……
新婚旅行中の姉夫婦は後1週間も帰って来ない…
おまけに学校は夏休みで…ほぼ毎日攻められ万李唖は現実でも義兄弟から……
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる