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パトスへの光 4

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「オムライス…小さく作ってもらえるかな?」
「小さく?」
「うん。満腹でクラブに行くと吐く」
「踊らなくてもいいし、踊ると言っても揺れてジャンプしてるだけの客が多いと思いますが。あちらにも食べ物は多少あるからいいでしょう」

特別踊る気満々ってことではないよ。今日はクラブ自体を楽しむという目的もあるしね。でも、何となくの習性だよ。満腹では動けない。

「これ、ありがとう」

兄に洗ったハンカチを返すと

「返さなくても良かったのに」

と私を見る。

「うん。あのね…お父さんの誕生日知ってる?っていうか…何歳?」
「ああ、そうですよね。この前は言ってなかったですね。親父は来月の11日に56になりますよ」
「11月11日だね、覚えた。お兄ちゃんは?」
「12月3日」
「1、2、3…だ」
「才花も1、2、3の1月23日ですね」
「お揃いだね」

調べものも仕事としている兄だからか、父から聞いたのか、兄が私の誕生日を知っていることが少し嬉しかった。



Scenic Gemは思ったよりも人が多かった。

「平日だよね…?金曜日?違う、木曜日だよ…」
「才花、こっち。進みますよ」
「ここのロッカーは?」
「席のリザーブしてあるので、そこにあります」

ロッカーの前で順番を待とうとした私の手首をそっと掴んで、兄は人混みをすり抜ける。

その間に‘ドッ…ドドン、ドッ…ドドン、ドッ…ドドン…’規則性のあるリズムがだんだんと大きくお腹に響き始める。

おおぉぉ…久しぶりに全面スピーカーの音を体に受けたね…ただ音の大きい音楽ではなく、クリアで心地の良い音を味わえるのもScenic Gemの魅力だね。

「なんか…こんな感じだったのかな?前は席とか知らなかったけど…」
「数日閉めて改装していたらしいですね。大きくは変わってないですけど、どこを改装してたんだ?それで今日は人が多いのかもしれません」

兄は席に着くと、壁にはめ込み式の小さなクローゼットを開けて上着や貴重品を入れてしまえと言ってから、カウンター以外は予約が必要なVIP席という席だということ。この予約がないと立ちっぱなしということも大いにあり得ること。VIP席専用の化粧室が完備されていること。フロアの行き来は自由なので踊りたくなればフロアにいけばいいこと、などを説明してから

「飲み物はどうしますか?」

と私に聞く。

「あのね、水とウーロン茶しか知らないレベルなの。ここでは、どうするのが正解かな?」
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