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変容期の心持ち 9
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「ここはヤダ」
「そうか」
そう応えつつ、私の熱量を確かめるように指先を動かしてから、羅依は私を抱き上げてバスタブから出る。そして二人まとめてさっとシャワーを掛けるとバスルームから出た…実に手際がいい。
そして手早く水滴をバスタオルに染み込ませると
「ドライヤーしろ。水、取ってくる」
チュッ…私の肩にキスをして鏡の前から消えた。身を屈めて落とされたキスにキュンとときめきながら、バスタオルを胸に巻き付けてドライヤーを手にすると
「才花、電話だ」
羅依が着信音の鳴る私のスマホと水を持って戻る。手を伸ばしながら
「誰?」
「叔母さん」
しーちゃんだと聞いてすぐに応答した。
「はい、しーちゃん?」
私の目の前に蓋の開いた水が差し出されたので、コクッと一口だけ飲む間に
‘才花、元気みたいね。今日、ジムで香ちゃんに会ったって?’
と聞こえてきた。
「うん、なんか30分早く来たみたいだよ。先生が言ってた」
‘そう。でもそれより、やめて来たって言っただけで遊びに出ちゃったんだけど、何か知ってる?’
そういう電話か…羅依をチラッと見ると彼は新たにタオルを取り出して、私の長い髪をタオルドライし始めた。
「ジムの入会のときにサインしている約束に違反したから退会になったの」
‘ジムの方からってこと?’
「うん」
‘どうして?’
「あのね、緒方先生のところはパーソナルジムっていうのが売りなの。もちろん先生の知識と指導力もあって、有名アスリートや芸能人が来る。だから‘ジム内の情報漏洩、拡散はしない’というルールがあるんだけれど、香さんは書き込みしちゃったの」
‘どんな?’
「羅依とタクが私を迎えに来てくれていて、緒方先生も一緒に休憩中だったの。3人は親友だからね。そこへ香さんが来て‘どこどこのジムでKingと緑川さんとご一緒してます’って書き込んだの。具体的にジムが特定出来る書き方だった。先生にすれば、個人指導しかしてないのに迷惑な営業妨害だから、その場で退会だって」
‘そういうこと…まだまだ子どもっぽいわね、香ちゃん。おばあちゃんたちに甘やかされて育ってるから、まだまだ本人が甘いあまい’
そう言いながらもしーちゃんは笑っているようだ。
‘分かったわ、ありがとう。これで私はたんぱく質メニューから解放されたってことね?’
やっぱり笑っているしーちゃんは‘またね’と通話を終えた。
「羅依…」
「ん?」
「しーちゃんにお父さんのことも、お兄ちゃんのことも言ってないの…正解かもしれない」
「俺もそう思う」
「そうか」
そう応えつつ、私の熱量を確かめるように指先を動かしてから、羅依は私を抱き上げてバスタブから出る。そして二人まとめてさっとシャワーを掛けるとバスルームから出た…実に手際がいい。
そして手早く水滴をバスタオルに染み込ませると
「ドライヤーしろ。水、取ってくる」
チュッ…私の肩にキスをして鏡の前から消えた。身を屈めて落とされたキスにキュンとときめきながら、バスタオルを胸に巻き付けてドライヤーを手にすると
「才花、電話だ」
羅依が着信音の鳴る私のスマホと水を持って戻る。手を伸ばしながら
「誰?」
「叔母さん」
しーちゃんだと聞いてすぐに応答した。
「はい、しーちゃん?」
私の目の前に蓋の開いた水が差し出されたので、コクッと一口だけ飲む間に
‘才花、元気みたいね。今日、ジムで香ちゃんに会ったって?’
と聞こえてきた。
「うん、なんか30分早く来たみたいだよ。先生が言ってた」
‘そう。でもそれより、やめて来たって言っただけで遊びに出ちゃったんだけど、何か知ってる?’
そういう電話か…羅依をチラッと見ると彼は新たにタオルを取り出して、私の長い髪をタオルドライし始めた。
「ジムの入会のときにサインしている約束に違反したから退会になったの」
‘ジムの方からってこと?’
「うん」
‘どうして?’
「あのね、緒方先生のところはパーソナルジムっていうのが売りなの。もちろん先生の知識と指導力もあって、有名アスリートや芸能人が来る。だから‘ジム内の情報漏洩、拡散はしない’というルールがあるんだけれど、香さんは書き込みしちゃったの」
‘どんな?’
「羅依とタクが私を迎えに来てくれていて、緒方先生も一緒に休憩中だったの。3人は親友だからね。そこへ香さんが来て‘どこどこのジムでKingと緑川さんとご一緒してます’って書き込んだの。具体的にジムが特定出来る書き方だった。先生にすれば、個人指導しかしてないのに迷惑な営業妨害だから、その場で退会だって」
‘そういうこと…まだまだ子どもっぽいわね、香ちゃん。おばあちゃんたちに甘やかされて育ってるから、まだまだ本人が甘いあまい’
そう言いながらもしーちゃんは笑っているようだ。
‘分かったわ、ありがとう。これで私はたんぱく質メニューから解放されたってことね?’
やっぱり笑っているしーちゃんは‘またね’と通話を終えた。
「羅依…」
「ん?」
「しーちゃんにお父さんのことも、お兄ちゃんのことも言ってないの…正解かもしれない」
「俺もそう思う」
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