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黒い後ろ楯 14
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羅依は私のサポーターを撫でながら続ける。
「緒方のところに通って、毎日トレーニングして、そのうちやりたいことがまた出てくる。それが仕事だとは限らない」
「そうですね。その時に仕事があると、辞められないと悩むことになり兼ねません。自然にやりたいことが涌き出てくるまでゆっくりでいいと思います。自由な時間があって働かないと、と思うかもしれませんがこれまでなかった自由な時間ですからね。いろんな所に出掛けたらいいと思います」
「そうだな。才花はずっとアパートとカフェとスクールの三角形にしか動いてないからな」
「羅依の言い方…ストーカーじゃん」
タクの笑い声を聞きながら、自由な時間…三角形にしか動いてない…と頭で復唱していた。
「生活費の心配ならする必要はない。私もまだ娘の生活費くらいは喜んで出せる」
「小松さん、俺がやっていける」
「羅依ならそうだろうけど、全部世話になっていると、それも才花の焦りに繋がるかもしれない。それに欲しい物を買う度に‘金をくれ’とは言いづらいものだよ。才花の好きに出来る金は親が持たせておかないとね」
「金をくれ、と言えるようになるまで甘やかす」
「それまで何週間?何ヵ月?何年?その間、才花が我慢するのか?そんなことさせられない」
「我慢なんてさせない」
「それは羅依の考え、展望、希望なだけで、才花の性格では難しい」
「性格を変えるわけではないが、甘えるという資質を呼び覚ます」
「ほお…興味深いね」
相手の言葉が終わった瞬間に口を開いて言い返す…父と羅依。
「二人とも今日はたくさん話すんですね」
お兄ちゃんが感心している。
「才花でいいですか?」
「うん」
「才花のところには間もなく、西河京子、江川ミナミから治療費、示談金、慰謝料が支払われます。この通帳に入金でいいですか?控えても?」
「うん、お願いします」
羅依が私の代理人を立ててくれたと思っていたけど、お兄ちゃんだったらしい。
「二人はまだ言い合ってるけど、そのお金は私の生活費になるくらいあるのかな?」
いくらとは私は提示していない。代理人任せだから分からない。
「全ての項目での合意、確定はまだのようですが、おそらく家が買えるくらいでしょう」
「…お兄ちゃんの例えが分からない…家の値段が分からない」
「1億くらいかと思いま…」
「えっ…億…?何がどうなったらそんな桁になるの?大丈夫?」
「緒方のところに通って、毎日トレーニングして、そのうちやりたいことがまた出てくる。それが仕事だとは限らない」
「そうですね。その時に仕事があると、辞められないと悩むことになり兼ねません。自然にやりたいことが涌き出てくるまでゆっくりでいいと思います。自由な時間があって働かないと、と思うかもしれませんがこれまでなかった自由な時間ですからね。いろんな所に出掛けたらいいと思います」
「そうだな。才花はずっとアパートとカフェとスクールの三角形にしか動いてないからな」
「羅依の言い方…ストーカーじゃん」
タクの笑い声を聞きながら、自由な時間…三角形にしか動いてない…と頭で復唱していた。
「生活費の心配ならする必要はない。私もまだ娘の生活費くらいは喜んで出せる」
「小松さん、俺がやっていける」
「羅依ならそうだろうけど、全部世話になっていると、それも才花の焦りに繋がるかもしれない。それに欲しい物を買う度に‘金をくれ’とは言いづらいものだよ。才花の好きに出来る金は親が持たせておかないとね」
「金をくれ、と言えるようになるまで甘やかす」
「それまで何週間?何ヵ月?何年?その間、才花が我慢するのか?そんなことさせられない」
「我慢なんてさせない」
「それは羅依の考え、展望、希望なだけで、才花の性格では難しい」
「性格を変えるわけではないが、甘えるという資質を呼び覚ます」
「ほお…興味深いね」
相手の言葉が終わった瞬間に口を開いて言い返す…父と羅依。
「二人とも今日はたくさん話すんですね」
お兄ちゃんが感心している。
「才花でいいですか?」
「うん」
「才花のところには間もなく、西河京子、江川ミナミから治療費、示談金、慰謝料が支払われます。この通帳に入金でいいですか?控えても?」
「うん、お願いします」
羅依が私の代理人を立ててくれたと思っていたけど、お兄ちゃんだったらしい。
「二人はまだ言い合ってるけど、そのお金は私の生活費になるくらいあるのかな?」
いくらとは私は提示していない。代理人任せだから分からない。
「全ての項目での合意、確定はまだのようですが、おそらく家が買えるくらいでしょう」
「…お兄ちゃんの例えが分からない…家の値段が分からない」
「1億くらいかと思いま…」
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