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黒い後ろ楯 11

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何故だか少し場が和み、私は冷めた珈琲を口にしたのだけれど、皆の視線を感じる。

「何?」
「いやぁ~才花ちゃんがScenic Gemで客を煽ってた姿を思い出してるんだよ」
「…タクはね…羅依は、何?」
「俺も」
「…一樹さんは…?」
「俺も」
「おかしいよね、羅依?」
「おかしくない。才花を探すために店のカメラ映像を一樹に渡したから」
「写真?ビデオ?」
「ビデオ」
「私も昨日になって、一樹に見せてもらったよ」

小松親子は何をやってるんですか…

「そんなこともありましたけど…はい…煽ってはいないよ…」
「煽ってた才花も良かったね」

はっ?父は何を言ってるんだ?

「あれは、ポイントを取りに行くダンスでなく、自分の心と体が弾んでるダンスだよね」
「それです、小松さん。あのときの店内の雰囲気は独特でしたよ」

羅依がそう言うと

「才花さん、リハビリ程度に踊りに行くなら、俺がScenic Gemに付き合いますよ。羅依とタクはフロアに降りないし、もちろん親父と出掛けるのは良くない。俺は組員じゃない。あんな仕事はしていますけど…いいよな、羅依?」

一樹さんが羅依を見てから父を見た。

ここで部屋のベルが鳴り、一樹さんがドアを開けに行くと

「ありがとうございます、ここまでで。あとはこちらで大丈夫です」

と言っている。何だろう、と思っていると一樹さんがワゴンを押して戻って来た。

「わぁ…アフタヌーンティー」
「大きなワッフルやパンケーキも美味しそうだったけれど、才花はサンドイッチやスコーンのある、甘いばかりでない物を好むかと…何も知らないから予想したんだが…」
「はい、ありがとうございます…おとーさん……恥ずかしい…」
「俺は…お兄ちゃんは無理ですか?紅茶も淹れますね」

お兄ちゃんか…羅依を見ると

「才花の家族だな」

そう言って私の髪を撫でた。
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