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親密性の確立 3

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それでも舌を絡ませ始める自分の気持ちを認めるしかない。

ただ…ほんの僅か…0.01%でも可能性があるなら…羅依を信じていないワケではないけれど、もしもの逃げ場を作りたいと弱った心で思う。夢のせいかもしれないけれど。

「…羅依」
「うん?」

私を自分の足の上で横向きにした彼は、私の唇を指先で拭う。

「お父さん…迷惑がかからないなら一度会えるといいな…お礼を伝えたい」

それも本心だ。18歳の誕生日に入金してくれるくらいだから私がダンスをしていることを知っていると思う。でも出来なくなった…それも申し訳ない。

「そうか。依頼しておく」
「ありがとう、羅依」



それから1週間はマンションから出なかった。じっとしていた訳ではない。

歩行訓練は広い部屋から部屋で十分出来たし、ストレッチなどマシンを使わない体のメンテナンスを丁寧に行った。

江川ミナミと西河京子の代理人から示談が持ち掛けられ、私では対応がわからないところを、羅依が助けてくれた。

彼は罰金なんて私には入らないのだから、こちらも代理人を立てて示談交渉で示談金を治療費と別にもらえばいいと言う。

また何度か警察に事情を聞かれるのも嫌だから、代理人を含めて羅依にお願いした。羅依にはお願いをしてばかりだ。

そしてこの1週間、羅依かタクのどちらかが家で仕事をしてくれていたのは、私の精神的安定を心配してのことだと思う。

タクにはささみの鍋を教えてもらったし、私も料理を作って立っている時間を増やした。

「うまい。俺好み」

薄い豚肉を広げて塩と小麦粉を振りアスパラを巻きフライパンで焼いただけ。それをブラックペッパーとレモンで食べる簡単なものだが、羅依の好みらしい。

「これも俺好み」
「…ありがと。でも全部好みって言うと、本当のことがわからない」
「どれも俺好み、本当に。明日も同じメニューでいい」
「……」

カボチャのバターシナモンソテーも、納豆入りチーズオムレツも、豆腐の味噌汁も好みらしい。

私は自分の感覚でいつものたんぱく質多めの食事を作ったけれど、レッスンをしていない分、食べる量は少ない。これで運動していない人と同じくらいだろう。

「もうひとつ食っとけ。動いてないことを計算しているんだろうが、今残っている筋肉を維持するために必要なものがあるだろ?」
「そっか、うん」

私のお皿に豚巻きが追加され、あとは羅依が綺麗に食べてくれた。
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