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親密性の確立 1

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夢を見ていた…私が入院している部屋に母が来ているという、現実とはあべこべのシチュエーションで‘才花の父親から預かっているお金が十分にあるから、ダンスも他のこともお金がないからと諦めることはない’と現実にあったように、青白い母が私に通帳を渡した。

諦めないとダメな状況なんだよ、お母さん。

魔法の言葉も、いずれ使わない方が良い呪いの言葉になる例だね。

「才花、起きたか?」

私が動いたからベッドも動いたのだろう。私をそっと抱きしめていた羅依の声が髪に当たる。

「…ごめん…起こした…」
「まだ寝てなかった」
「何時?」
「12時くらい。腹へってないか?」
「どうだろ…夢見てた…」
「俺の夢?」
「ふふっ…ごめんね、お母さんの夢…お父さんの存在が分かる記憶…でも名前も何も知らない…」
「会いたいか?」
「会いたい?…分からない…」
「そうか」
「これまで考えたことないの。はっきりと知らないけど、お母さんと結婚出来ない事情があったようだし…多分、私と会うのも迷惑だと思うよ?」
「そうか。今、初めて考えて、もし今後会いたいなら会えばいい」
「どうやって?」
「探せる奴がいるだろ」
「私のこと調べたみたいに?」
「そういうことだ」
「…そっか…羅依…シナモンのホットミルク作って」

チュッ…頭へのキスで返事をした羅依は

「俺好みのお願いが出来たな。いい子だ」

ぎゅうっと私を抱きしめてから部屋を出た。



「羅依はご飯食べた?」
「食べたし、ワークアウトもした」

ベッドで羅依にもたれて座りながらホットミルクを飲む。美味しい。

「私も…ちゃんとするから」
「そうか」

後ろから私のお腹の前で手を組む彼は‘何を?’とも聞かずに‘そうか’と言う。

「羅依の‘そうか’は心地いいから好き」
「そうか…才花限定にしようか?」
「ふっ…タクのいつもの冗談より、羅依のたまに言う冗談の方が面白いね」
「冗談は言ってないが?」
「そうか」
「才花の‘そうか’もいい」
「そうか…羅依限定には…出来ないね。考えて話するのは難しい」

もう一口ホットミルクを飲むと

「ちゃんと食べて、リハビリして…あとは分からないけど…そのふたつはちゃんとするから」

と伝える。自分で言葉にするのも大切だと思った。何をするのか分からないけれど、青白い母を思い出すと食べて動かないといけない気がする。

「ふたつも出来れば上出来だ」
「そう?ささみの鍋、タクに教えてもらおうかな?」
「いいんじゃないか?」
「うん、そうだよね。そうする」
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