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迷路未解決 2
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疲れた…運転席から後ろにどんどん質問されるけれど、眠くなってきた。
「…いいんじゃない…かな?」
そう言ったのはあくび混じりになって、ハッと口を閉じる。
「病院で眠れなかったんだろ?目、閉じておけ」
「うん」
聞きたいことはたくさんあったけど、まぶたが落ちてくる。羅依が私の手を握ったことを感じた後、すぐに意識を沈ませた。
そして目が覚めたのはお姫様のように抱かれたエレベーターの中でだった。
「危ない、動くな」
目覚めの朦朧とした中でバタバタした私を、手が使えずに額を使って止める羅依を見て
「俺、キスシーン見せられてる?」
とタクが笑う。額同士が合わさっているだけだよ…あの夜のキスは唇以外に降ってきたんだと思い出しながら
「…もうじっとしてる」
「保険」
「そのまま話さないで…」
唇を動かすと触れてしまいそうだ。
「セクシーさも俺好み…この距離で囁かれるとたまんねぇ」
羅依の冷たい囁きもセクシーなんてもんじゃない。クセになりそうなフレーバーを含んでいる。
玄関に荷物を置いたタクはすぐに出て行った。
「横になるか?」
あの夜最後に座っていたソファーに私を下ろすと、羅依はクッションを隅にセットし私の頭をその上に置く。
介護されているようだけれど、体に力が入らない。今だったら松葉杖も無理だと思う。
「…聞きたいこといっぱいなのに…」
「俺は才花の側にいる。いつでも聞けるだろ?」
「元気出ない…」
「睡眠も食事も足りなきゃそうなる。待ってろ」
頬をそっと撫でた羅依が見えなくなると目を閉じる。
ケガ…ダンス無理…痛い…ダンス無理…レッスンできない…体動かない…手術…無理…しーちゃん…ごめん…お母さん…ダンス続けられないの…やだ…お父さん…見たことないけどあんなにお金いっぱいもらったのに…終わった…イギリス…警察…何なの…
「才花」
呼ばれた時には羅依の腕の中にいた。
「なんて顔してんだよ…泣いて喚いて誰かを罵って、また泣いて…それが出来りゃいいのにな…」
しばらく私の頭を撫でてから
「ん」
と私を自分の膝の上に座らせた羅依は
「もう飲めるだろ。飲め」
私にマグカップを持たせる。
「ホットミルク?シナモン…?」
「…いいんじゃない…かな?」
そう言ったのはあくび混じりになって、ハッと口を閉じる。
「病院で眠れなかったんだろ?目、閉じておけ」
「うん」
聞きたいことはたくさんあったけど、まぶたが落ちてくる。羅依が私の手を握ったことを感じた後、すぐに意識を沈ませた。
そして目が覚めたのはお姫様のように抱かれたエレベーターの中でだった。
「危ない、動くな」
目覚めの朦朧とした中でバタバタした私を、手が使えずに額を使って止める羅依を見て
「俺、キスシーン見せられてる?」
とタクが笑う。額同士が合わさっているだけだよ…あの夜のキスは唇以外に降ってきたんだと思い出しながら
「…もうじっとしてる」
「保険」
「そのまま話さないで…」
唇を動かすと触れてしまいそうだ。
「セクシーさも俺好み…この距離で囁かれるとたまんねぇ」
羅依の冷たい囁きもセクシーなんてもんじゃない。クセになりそうなフレーバーを含んでいる。
玄関に荷物を置いたタクはすぐに出て行った。
「横になるか?」
あの夜最後に座っていたソファーに私を下ろすと、羅依はクッションを隅にセットし私の頭をその上に置く。
介護されているようだけれど、体に力が入らない。今だったら松葉杖も無理だと思う。
「…聞きたいこといっぱいなのに…」
「俺は才花の側にいる。いつでも聞けるだろ?」
「元気出ない…」
「睡眠も食事も足りなきゃそうなる。待ってろ」
頬をそっと撫でた羅依が見えなくなると目を閉じる。
ケガ…ダンス無理…痛い…ダンス無理…レッスンできない…体動かない…手術…無理…しーちゃん…ごめん…お母さん…ダンス続けられないの…やだ…お父さん…見たことないけどあんなにお金いっぱいもらったのに…終わった…イギリス…警察…何なの…
「才花」
呼ばれた時には羅依の腕の中にいた。
「なんて顔してんだよ…泣いて喚いて誰かを罵って、また泣いて…それが出来りゃいいのにな…」
しばらく私の頭を撫でてから
「ん」
と私を自分の膝の上に座らせた羅依は
「もう飲めるだろ。飲め」
私にマグカップを持たせる。
「ホットミルク?シナモン…?」
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