23 / 120
迷路未解決 2
しおりを挟む
疲れた…運転席から後ろにどんどん質問されるけれど、眠くなってきた。
「…いいんじゃない…かな?」
そう言ったのはあくび混じりになって、ハッと口を閉じる。
「病院で眠れなかったんだろ?目、閉じておけ」
「うん」
聞きたいことはたくさんあったけど、まぶたが落ちてくる。羅依が私の手を握ったことを感じた後、すぐに意識を沈ませた。
そして目が覚めたのはお姫様のように抱かれたエレベーターの中でだった。
「危ない、動くな」
目覚めの朦朧とした中でバタバタした私を、手が使えずに額を使って止める羅依を見て
「俺、キスシーン見せられてる?」
とタクが笑う。額同士が合わさっているだけだよ…あの夜のキスは唇以外に降ってきたんだと思い出しながら
「…もうじっとしてる」
「保険」
「そのまま話さないで…」
唇を動かすと触れてしまいそうだ。
「セクシーさも俺好み…この距離で囁かれるとたまんねぇ」
羅依の冷たい囁きもセクシーなんてもんじゃない。クセになりそうなフレーバーを含んでいる。
玄関に荷物を置いたタクはすぐに出て行った。
「横になるか?」
あの夜最後に座っていたソファーに私を下ろすと、羅依はクッションを隅にセットし私の頭をその上に置く。
介護されているようだけれど、体に力が入らない。今だったら松葉杖も無理だと思う。
「…聞きたいこといっぱいなのに…」
「俺は才花の側にいる。いつでも聞けるだろ?」
「元気出ない…」
「睡眠も食事も足りなきゃそうなる。待ってろ」
頬をそっと撫でた羅依が見えなくなると目を閉じる。
ケガ…ダンス無理…痛い…ダンス無理…レッスンできない…体動かない…手術…無理…しーちゃん…ごめん…お母さん…ダンス続けられないの…やだ…お父さん…見たことないけどあんなにお金いっぱいもらったのに…終わった…イギリス…警察…何なの…
「才花」
呼ばれた時には羅依の腕の中にいた。
「なんて顔してんだよ…泣いて喚いて誰かを罵って、また泣いて…それが出来りゃいいのにな…」
しばらく私の頭を撫でてから
「ん」
と私を自分の膝の上に座らせた羅依は
「もう飲めるだろ。飲め」
私にマグカップを持たせる。
「ホットミルク?シナモン…?」
「…いいんじゃない…かな?」
そう言ったのはあくび混じりになって、ハッと口を閉じる。
「病院で眠れなかったんだろ?目、閉じておけ」
「うん」
聞きたいことはたくさんあったけど、まぶたが落ちてくる。羅依が私の手を握ったことを感じた後、すぐに意識を沈ませた。
そして目が覚めたのはお姫様のように抱かれたエレベーターの中でだった。
「危ない、動くな」
目覚めの朦朧とした中でバタバタした私を、手が使えずに額を使って止める羅依を見て
「俺、キスシーン見せられてる?」
とタクが笑う。額同士が合わさっているだけだよ…あの夜のキスは唇以外に降ってきたんだと思い出しながら
「…もうじっとしてる」
「保険」
「そのまま話さないで…」
唇を動かすと触れてしまいそうだ。
「セクシーさも俺好み…この距離で囁かれるとたまんねぇ」
羅依の冷たい囁きもセクシーなんてもんじゃない。クセになりそうなフレーバーを含んでいる。
玄関に荷物を置いたタクはすぐに出て行った。
「横になるか?」
あの夜最後に座っていたソファーに私を下ろすと、羅依はクッションを隅にセットし私の頭をその上に置く。
介護されているようだけれど、体に力が入らない。今だったら松葉杖も無理だと思う。
「…聞きたいこといっぱいなのに…」
「俺は才花の側にいる。いつでも聞けるだろ?」
「元気出ない…」
「睡眠も食事も足りなきゃそうなる。待ってろ」
頬をそっと撫でた羅依が見えなくなると目を閉じる。
ケガ…ダンス無理…痛い…ダンス無理…レッスンできない…体動かない…手術…無理…しーちゃん…ごめん…お母さん…ダンス続けられないの…やだ…お父さん…見たことないけどあんなにお金いっぱいもらったのに…終わった…イギリス…警察…何なの…
「才花」
呼ばれた時には羅依の腕の中にいた。
「なんて顔してんだよ…泣いて喚いて誰かを罵って、また泣いて…それが出来りゃいいのにな…」
しばらく私の頭を撫でてから
「ん」
と私を自分の膝の上に座らせた羅依は
「もう飲めるだろ。飲め」
私にマグカップを持たせる。
「ホットミルク?シナモン…?」
67
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
玖羽 望月
恋愛
親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。
なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。
そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。
が、それがすでに間違いの始まりだった。
鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才
何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。
皆上 龍【みなかみ りょう】 33才
自分で一から始めた会社の社長。
作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。
初出はエブリスタにて。
2023.4.24〜2023.8.9
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる