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文目も分かず 11

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‘…才花の気持ちも…お互いによく分かるので理解は出来ますけれど、現実的に放っておけないでしょ?’
「放っておきませんよ。私が責任持って才花を預かります」
‘どういうお知り合いですか?’
「それは木村さん親子にゆっくりと聞いて下さい。退院とスポーツ診療科の紹介と聞いた木村さんが‘病院を紹介してもらうにしても、才花一人で生活できない’と言い、娘さんが‘アパートの2階、しかも畳の部屋でなんて無理よね’と言うんですから、放っておけないという意識とは違っておられます」

そこでしーちゃんは黙ってしまった。

「しーちゃん、大丈夫だよ。香さんから見て私と羅依は、あ…藤堂さんは羅依っていうんだけど、仲良しに見えるくらいだから」

しーちゃんを安心させようと慌てて発した言葉は役立つようにも思えないけど、しーちゃんに新たな心配を掛ける訳にはいかない。

「羅依が‘大丈夫だ’って言うから、大丈夫な気もするし。えっと…あとは…あ、家に行くのも初めてでないくらいには知り合いだし…って…羅依、あってる?」
「ん、来たことあるな。あそこでいいか?」
「ソファーとか椅子生活じゃないと無理だから…お世話になります。病人じゃないから出来ることはする。もちろん家賃は払うよ」
「バイトも出来ないのに?と思うが…出来ることはするって聞けたことが嬉しい。才花が生きるって宣言したようで嬉しい。さっきまで水も飲まないで死にたいのか?というくらいだったのに」

冷たい声で嬉しいと言うから分かりづらいけれど…どうでもいい、と思いながらも私は生きる宣言をしたの?

‘藤堂さんが嬉しいとおっしゃる同じ部分で、私はほんの少しだけ安心しました。ほんの少しですけど…絶望の中でも生きたいという本能が働いた部分と、無意識にでも私を気遣ってくれた部分で出来た言葉でしょうから100%の才花の気持ちじゃない’
「はい。それでも俺は才花の発した言葉を100%、裏でなく表を受け止めたい。気遣って発していようが、無理して発していようが、嘘であろうが真っ直ぐに受け止めます。その後で彼女が本心をさらけ出せたら…」
「ただの知り合いなのにそこまでします?」

羅依の言葉を遮って、ずっと座っていた香さんが立ち上がり、ベッドサイドで羅依と向かい合った。

「しーママ、知り合いって男の人だよ?いいの?」
「人が死にたいほどのどん底にいるときに、あまりに下品で低俗な質問…くだらねぇな。それとも、男と女が揃えばその‘いいの?’というコトしかアンタの頭の中にはないのかもな」
「ひどい…」
「アンタが先に言ったんだろうが。自分の言葉に責任持てないお子ちゃまか?それならうちのクラブやなんかは出禁にしてやるよ」

クラブ経営者なのか…他にもありそうな口ぶりだな。
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