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文目も分かず 8

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その羅依の言葉に‘それだ’と気づきがあり、少しすっきりとする自分がいて性格悪いな…と我ながら思う。

香さんから‘家族’というワードが飛び出すたびに、違和感を感じるんだ。

これまで特に嫌われているとも感じていないけれど、家族という雰囲気を感じたこともない。だからしーちゃんと約束の食事には行くけれど、この2年間で1泊もせずに自分のアパートに帰っている。

「羅依、俺のスマホ充電切れた。すぐ岡久さんに電話して。才花ちゃんの診察を受けてもらえるように話をつけてしまえば、ここのMRI画像データを使えるようにして退院」

戻ったタクの声にそっと布団から顔を出すと

「退院しような、才花ちゃん」

とタクが笑う。私はベッド近くにあるローチェストを指差し、上にあるマルチ充電器を教えた。

「あ、使お。車に充電器はあるんだけどね」
「もしもし岡久先生、藤堂です。お忙しいところ申し訳ないのですが、一人、先生に診て頂きたい…前十字靱帯損傷…断裂でなく損傷ですが手術と言われている…膝崩れ?…ああ、待って。今ここにいるので…他にケガもあって入院してるけど、あとは靱帯だけだから退院した方がいいと思って…はい」

羅依は私を見ると

「膝崩れがあるか?と、スポーツ診療科の先生が聞いてる」
「膝崩れって…抜けたような?外れる感覚?」
「先生、聞こえた?…才花、それがあるか?」
「ある」
「ある…分かりました。総合病院でMRI画像データがもらえるんで…はい。お願いします」

先生と話しながら私を睨み付け始めた。何?

「才花」
「…怖いんだけど?…なに?」
「お前、喉渇いてるだろ?」
「…どうして分かるの…?」
「唇を見りゃ、分かる」
「…っ…ぃたっ…」
「才花ちゃん、それはデコピンの真似で羅依のデコピンの半分以下の威力。はい、水」

いやいや、立派なデコピンだよ…額を擦る私にタクが冷蔵庫から出した水を手渡してくれる間も、羅依は私を睨み付けてる。

「…怖いってば…」
「仲いいんですね、3人は」

香さん…どこを見てそう思うの?私はめちゃくちゃ睨まれて、無言で怒られてるんだけど…

「そうですね。アナタのように、そうやってじっとしていられないくらいには、相手のことをわかって動ける者同士ですから」

タクは自分が冷蔵庫に行ったことを自慢気に香さんに言うと

「才花ちゃん、荷物をまとめて帰る用意して」

と私の額を覗きながらクスクスと笑う。

「病院を紹介してもらうにしても、才花ちゃん一人で生活できないよ」
「そうよ。アパートの2階で、しかも畳の部屋でなんて無理よね」

洋輔さんと香さんの声に、私を睨み付けていた羅依が無表情へと変わる。

「言いたいことはそれだけですか?」
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