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そこからは稲葉先生曰く‘早い方よ’という出産だった。
痛みに耐える私には長い長い12時間だったが、正宗がずっと付き添ってくれ、おにぎりを握ってきてくれた一美さんも10時くらいからずっといてくれた。痛みの合間に一美さんに言われるままおにぎりを食べ、持ってきてくれたゼリーを食べる。途中、正宗が稲葉先生と一美さんに何回か
「この痛がりかた異常じゃねぇか?大丈夫なのか?」
と慌てて聞いていたが「「普通」」と冷たく言われるのを痛みの中で耳にして、きゅっと彼の手を握ると彼は慌てた声を封印し穏やかに
「大丈夫だ、綸。頑張ってるな」
と、もう片方の手で強く腰を擦り額に唇を落とした。それから夕方5時を過ぎて
「そろそろね」
稲葉先生の指示で分娩室に入ってからが早かった。私が先に分娩室に入ると同時に破水、正宗は入室準備をしてからあとに入って来たのだが、その時には
「もう頭出るよ。もう後退しないからね、早そうだね」
私は先生に言われるままに呼吸を繰り返し
「綸、上手だ」
と手を握る正宗に励まされ、ついに赤ちゃんの第一啼泣、力強い産声が分娩室に響いた。
「おめでとう、高須さん。大きい声ねぇ、元気な男の子ですよ」
先生が私の胸に吉宗を乗せて下さる。
「吉宗…会えたね。頑張ったね…」
「綸が頑張った…ありがとう、綸」
正宗の震える声に彼を見るが、彼は涙を見せることなく
「綸は問題ないか」
と先生に聞く。
「大丈夫ですよ。出血量も平均的なものですから」
そう聞いた正宗は
「吉宗、よくやった。上手に出てきたな。さすが俺の子だ」
と……そっと吉宗に触れた。
【6月30日17時51分 高須吉宗 2892g 誕生】
痛みに耐える私には長い長い12時間だったが、正宗がずっと付き添ってくれ、おにぎりを握ってきてくれた一美さんも10時くらいからずっといてくれた。痛みの合間に一美さんに言われるままおにぎりを食べ、持ってきてくれたゼリーを食べる。途中、正宗が稲葉先生と一美さんに何回か
「この痛がりかた異常じゃねぇか?大丈夫なのか?」
と慌てて聞いていたが「「普通」」と冷たく言われるのを痛みの中で耳にして、きゅっと彼の手を握ると彼は慌てた声を封印し穏やかに
「大丈夫だ、綸。頑張ってるな」
と、もう片方の手で強く腰を擦り額に唇を落とした。それから夕方5時を過ぎて
「そろそろね」
稲葉先生の指示で分娩室に入ってからが早かった。私が先に分娩室に入ると同時に破水、正宗は入室準備をしてからあとに入って来たのだが、その時には
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「吉宗…会えたね。頑張ったね…」
「綸が頑張った…ありがとう、綸」
正宗の震える声に彼を見るが、彼は涙を見せることなく
「綸は問題ないか」
と先生に聞く。
「大丈夫ですよ。出血量も平均的なものですから」
そう聞いた正宗は
「吉宗、よくやった。上手に出てきたな。さすが俺の子だ」
と……そっと吉宗に触れた。
【6月30日17時51分 高須吉宗 2892g 誕生】
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