さまよう綸◆◆若頭からの求愛…迷惑だわ◆◆ 【完結】

side Masamune 1

「…あなたじゃないと…ダメなの」

　くっ…歓喜のあまり舐めていた綸の括れたウエスト辺りを噛んじまった…悪い…痛いだろうと、気休めに舐めると腰をくねらせ俺の髪に指を差し込む綸は半分寝そうになっている。

　そりゃそうだな…朝から髪のセットに美容室へ行き3時間ほど車で移動後、結婚式へ参列。

　式直前に電話をかけてきた時は‘会いたくなったから電話した’など、遠く離れていても俺を煽る天才だ。

　その後、旅館での披露宴…日常的に伊東か小笹から定期的に連絡は入る。

　航平の嫁も悪気があるわけではないだろう。ヤクザは怖いから関わりたくないと思う者の方が多いのだから、一般的な意見だ。俺も組の者も何を言われようが気にならない。

　しかし、俺の綸を攻撃するのは…くそっ、航平…しっかり嫁をしつけろよ。

　だが、伊東からの報告で綸は今までように‘ごめんなさい’と下を向くのではなく、表情も変えず凛と前を見据えていた。とても立派な高須の姐さんを見た気がする。

　そう聞くと一刻も早く抱きしめたい。

　いつも人の心配が先の綸の事だ。航平の祝いの席で不穏な空気にならないよう、航平や鞠子に気を使い、さらに伊東と小笹のことも気にかけて表情に出さずとも頭と心は忙しく働いていただろう。

　すぐに俺が癒してやる。

　綸が旅館を出た時間から合流可能なサービスエリアを割り出し迎えに行く。3時間も一人で座らせておけない。

　抱きしめてやりたい。