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第十二話 4

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 7月8日、13時ちょうどに伊東さんたちが国府に迎えに来てくれた。

 リッキーによると暑気払いは17時開始で、国府も組長夫妻とリッキーが参加するらしい。

「お世話になり、ありがとうございました」
「何言ってんの、ここには綸ちゃんの部屋があるでしょ?はい、挨拶やり直しっ!」

 一美さんに言われてリッキーを見ると、明るい髪を揺らして笑っている。

「いってきます」
「「「「いってらっしゃい」」」」
「伊東、大事な妹を頼む」

 一美さんとリッキーの言葉に鼻の奥がツンとし、急いで車に乗り込んだ。

「綸さん、おかえりなさい」
「おかえりなさい」

 伊東さんも乗り込み車のドアが閉まると、伊東さん小笹さんから声も掛けられる。

「…ただいま…お迎えありがとうございます」
「いえ、若がお待ちです。参りましょう」

 車内には小さくマサムネの曲が流れている。

「歌…入れてくれたの?」
「はい、この車を綸さん専用にと決めたので若の指示で入れました」
「俺は潤さんの指示で結構歌えるようになったっす」
「えっ…小笹さん…それは必要かな?」

 ♪~~~♪


 大きなホテルに到着すると伊東さんは迷わず私を一室へ案内した。コンコン…

「伊東です。綸さんお連れしました」

 すぐに重そうなドアが内側に開かれたと思うと腕を引かれ、すっぽりと温かい腕に包まれた。

 パ…タ……ン…

 ドアがゆっくり閉まる音が背後でする。

「…正宗?」
「ん」

 全く動く気配のない彼に声を掛けるが、それでも彼は動かない。彼のいつもより少しだけ早い鼓動を聞きながら心地よい沈黙に身を委ねる。しばらくして彼はやっと呼吸をしたかのように深く息を吸う。

「綸の匂いがする」
「ただいま…」

 なぜそう言ったのかわからない。でも私はごく自然に‘ただいま’そう言ったんだ。

 彼は私を子どものように抱き上げ部屋のソファーに座ると、私を右膝に乗せ左手で髪を撫でながら

「おかえり、綸。迎えが遅れて悪かった」
「うん、大丈夫」
「綸、大丈夫は無しだ。他の言葉で聞く」
「………」
「良いことも悪いことも‘大丈夫’で飲み込むのは禁止」
「…むぅ……」
「ぶっ、膨れても可愛い」

 そう言うと彼は私の膨らんだ頬にキスをした。そして

「聞いてくれるか?」

 彼はマンションに帰らなかった日から今日までの事を、とても丁寧に話してくれた。
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