さまよう綸◆◆若頭からの求愛…迷惑だわ◆◆ 【完結】

第十話 11

　名誉な事なのか…だけどそうなると余計に私が名指すというのもどうかと思うし、本当に考えたことが無いから困ったな。

　京太さんがグラスについた水滴を指で拭いながらにこやかに聞いてくる。

「綸ちゃん、今日初めて見た顔が半分いるだろうけど話しているのを見たり聞いていて、生理的に無理って人はいない？」
「ぶっ、京太さん…そんなのいても綸ちゃん言えないでしょ？」

　相変わらず吹き出す潤は汚い。

「そんな人はいません。でも考えたことの無いことで…名誉な事っていう重要なことを突然決められない」
「わかった。俺が決めるから大丈夫だ」

　正宗がそう言うと全員がグラスや箸をテーブルに置き、手を膝に姿勢を正す。私も急いで湯飲みを置いて背筋を伸ばした。

「綸付きは、伊東に頼む」

　ガタガタっと椅子から立ち上がった伊東さんが

「大変光栄です。この身をもって綸さんをお守りします」

　と最敬礼する。へっ…身をもっては困るな…と思っていると正宗が

「座って聞いてくれ。綸付きは伊東が責任を持って勤めてくれ。運転やその他、出る場所によって伊東が人員必要と思う時にはここにいる者に依頼して欲しい。そこは皆も伊東に従って欲しい」
「「「「「「承知」」」」」」

　すごい大袈裟に聞こえるのは私だけのようで皆、至極真面目な顔つきだ。