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第十話 4
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「余裕?わからないけど…今って緊張すべきところ?」
男二人が笑いをこらえたのがわかり何となくこの場を離れようと
「さっさと済まそう」
と言った時、男二人と潤たちの笑い声が廊下に響く。正宗は気にせず
「行くぞ」
と同時に勢いよく内障子を開けた。正宗に手を引かれ中央の座布団に向かう間に部屋を見渡すと30数人といったところか、黒スーツの中に今泉先生を見つけると先生がこちらへ手を上げるので小さく手を振った。座るまでに組長らしき人から声が掛かる。
「廊下から賑やかに聞こえてたな。正宗いつもこんな感じなのかお前?」
「潤と駿がうるさい」
「「いやいや、綸ちゃんが…」」
と二人は、はっと口を閉じ「「失礼しました」」と下がった。綸、小さく声を掛けられ正宗と並んで座る。ああ…正座はあの捻挫を思い出すくらいには足首に違和感を与えるな…大丈夫かな?なるべく負担のかからない箇所をごそごそと探すと、姐さんがにっこり言った。
「あら~正宗は正座も満足に出来ない娘を連れて来たの?」
正宗が何も答えないので私も黙ってやり過ごす。
「綸ちゃん、足首の靭帯が一部伸びたままやから正座はきついんやろ?車から飛び降りるようなやんちゃするからな。椅子かサポーター持って来ようか?」
今泉先生の関西弁が聞こえたのには答える。
「先生、ありがとう。いまゆっくり伸ばしたからもう大丈夫です。帰りはサポーター欲しいかも…」
と言いきる前に隣から腕が伸び一瞬で正宗の胡座の中に収まった。
「っちょっ…正宗、下ろして…ここでこれは流石におかしいでしょ?」
「何故?」
「はっ?何故?こっちが聞きたいくらいよ、何故この態勢?」
「綸の足を守ってるからだろ?」
「ねぇ…TPOって知ってる?」
「ああ」
「うそ…時と場所、場合に合わせて行動や言動をわきまえるってことだよ」
「綸の足に合わせて行動した俺は正しい」
「「「「「ぶわっはぁ…はっ」」」」」
広い和室が低い爆笑に包まれびくっとしながら前を見ると正宗に良く似た組長も声を上げて笑い、人二人分ほど開けて座る姐さんは唇を噛みしめている。
男二人が笑いをこらえたのがわかり何となくこの場を離れようと
「さっさと済まそう」
と言った時、男二人と潤たちの笑い声が廊下に響く。正宗は気にせず
「行くぞ」
と同時に勢いよく内障子を開けた。正宗に手を引かれ中央の座布団に向かう間に部屋を見渡すと30数人といったところか、黒スーツの中に今泉先生を見つけると先生がこちらへ手を上げるので小さく手を振った。座るまでに組長らしき人から声が掛かる。
「廊下から賑やかに聞こえてたな。正宗いつもこんな感じなのかお前?」
「潤と駿がうるさい」
「「いやいや、綸ちゃんが…」」
と二人は、はっと口を閉じ「「失礼しました」」と下がった。綸、小さく声を掛けられ正宗と並んで座る。ああ…正座はあの捻挫を思い出すくらいには足首に違和感を与えるな…大丈夫かな?なるべく負担のかからない箇所をごそごそと探すと、姐さんがにっこり言った。
「あら~正宗は正座も満足に出来ない娘を連れて来たの?」
正宗が何も答えないので私も黙ってやり過ごす。
「綸ちゃん、足首の靭帯が一部伸びたままやから正座はきついんやろ?車から飛び降りるようなやんちゃするからな。椅子かサポーター持って来ようか?」
今泉先生の関西弁が聞こえたのには答える。
「先生、ありがとう。いまゆっくり伸ばしたからもう大丈夫です。帰りはサポーター欲しいかも…」
と言いきる前に隣から腕が伸び一瞬で正宗の胡座の中に収まった。
「っちょっ…正宗、下ろして…ここでこれは流石におかしいでしょ?」
「何故?」
「はっ?何故?こっちが聞きたいくらいよ、何故この態勢?」
「綸の足を守ってるからだろ?」
「ねぇ…TPOって知ってる?」
「ああ」
「うそ…時と場所、場合に合わせて行動や言動をわきまえるってことだよ」
「綸の足に合わせて行動した俺は正しい」
「「「「「ぶわっはぁ…はっ」」」」」
広い和室が低い爆笑に包まれびくっとしながら前を見ると正宗に良く似た組長も声を上げて笑い、人二人分ほど開けて座る姐さんは唇を噛みしめている。
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