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第九話 8

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 久しぶりに出勤するキャバクラ前に車が静かに停止した。

 降りたくない…送ってもらうってこんな登場の仕方になるの?正宗と乗る車の前後にも黒塗りがぴったり停止し、店の前にはオーナーと彼の立場上側近と思われる男性2人、そしてママが待ち構えている。

「開店もしてないのに超VIPのお迎えみたいになってるよ…正宗だけ降りる?」
「「ぶっはぁ」」

 二人仲良く吹き出したあと潤が

「正宗に出勤させる?綸ちゃん、どうすんの?」
「近くでこっそり降りていつもみたいに裏から入るよ」

 正宗は私の肩を撫で

「悪いな、綸。俺の女というのは…こんなのがつきまとってしまう…慣れてくれ」

 僅かに瞳を揺らす正宗も本意ではないのだろう…だが彼は生まれた時からこの状況を背負っているんだ。

「正宗…私、無になるのは得意だから。こういう時にはその力を発揮してもいいでしょ?」
「ああ…悪い…いつもお前に言うこととは反対だがそれがいいかもな。だがな、綸。誰かに何か言われて無になるばかりでなく、思い切り言い返してもやり返しても構わないぞ。全部俺が拾ってやる」
「そうだよ、綸ちゃん。俺も潤もそういう後始末得意だからね」
「うん…何かありそうな感じで送り出されるのも怖いけど……行くよ」

 正宗は私の頭と額にキスを落とし言った。

「これからずっとの話だ。今日ここでの事じゃない、心配すんな」
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