38 / 340
Side Masamune 1
しおりを挟む
俺は今日、自分と同じピンと一本張りつめた、細く美しい糸を見つけた。
その何も映さない瞳の色が俺の燻るものに火をつけるのは簡単だった。
イヤホンをつけるとほんの僅かにその色が変わり大きな猫目の目尻がふっと緩む。俺にその瞳を向けて欲しい。
彼女の職場を調べ迎えに行くが、彼女…綸は車から飛び降りるという予想外の事をやってみせる。すぐに見失い、チッ…絶対にケガしただろ…
「潤、ここから綸の最寄り駅向こう2駅」
潤に伝え俺は電話を一本入れる。
「泉先生を乗せて○○駅方面で待機してくれ。先生にこの電話すぐ繋げるか?」
本家の人間に電話し医者の今泉先生に出てもらうよう頼む。彼は高須組本家の一室に住み平日午前は病院勤務し午後からは本家にいる。俺たちは泉先生と呼んでいる、本物の極道より厳つい顔の医者だ。
‘もしもし、わしが出るんか?怪我人か?’
「ああ、女が車から飛び降りた」
‘がははっ、正宗の女か?’
「いや、そうなる女だ」
‘そうかそうか、ほな急ぐわ。症状は?’
「わからない…逃げてる」
‘ぶわっはっ…わしその子、見てもないのに気に入った。はよ見つけて連絡くれ。わしは近くで待機やな’
探し始めて1時間半、ようやく最寄り駅のひとつ向こう駅前のファーストフード店にいると連絡がありすぐに向かう。俺たちが到着した時、綸は店を出て男に腰を抱かれていた。車を飛び出すと駿が低く
「正宗!お前は綸ちゃん、俺が男」
プライベートモードで俺を呼び、やり過ぎないよう男には触るなと言う。俺と同い年の潤と駿は4歳の頃から親父の側近、畠山さんに連れられ本家に来るようになり、共に学び訓練し遊んだ仲で30歳の今までずっと変わらず側にいる。時に側近、時には秘書そして時には親友となる双子だ。
その良く似た双子を瞬時に見分けた綸に感心しながら車へ彼女を乗せ泉先生に診察を任せる。頭は打っておらず足首捻挫が一番酷そうだ。不自由な足でも家に帰り寝て治すと言う彼女は人に頼るという事を知らないのだろう。俺だけを頼り俺だけに甘えて欲しい。どろどろに溶かしてやりたい。そう思っていた俺が甘いと知るのはすぐの事だった。彼女の部屋を見た俺と潤は思わず‘はっ?’と声を上げた。物が少ないというよりは何もない、毎日人が生活しているとは到底思う事のできない死に支度の整ったような異様さに、彼女の瞳の色の奥深さを感じ部屋を後にした。
その何も映さない瞳の色が俺の燻るものに火をつけるのは簡単だった。
イヤホンをつけるとほんの僅かにその色が変わり大きな猫目の目尻がふっと緩む。俺にその瞳を向けて欲しい。
彼女の職場を調べ迎えに行くが、彼女…綸は車から飛び降りるという予想外の事をやってみせる。すぐに見失い、チッ…絶対にケガしただろ…
「潤、ここから綸の最寄り駅向こう2駅」
潤に伝え俺は電話を一本入れる。
「泉先生を乗せて○○駅方面で待機してくれ。先生にこの電話すぐ繋げるか?」
本家の人間に電話し医者の今泉先生に出てもらうよう頼む。彼は高須組本家の一室に住み平日午前は病院勤務し午後からは本家にいる。俺たちは泉先生と呼んでいる、本物の極道より厳つい顔の医者だ。
‘もしもし、わしが出るんか?怪我人か?’
「ああ、女が車から飛び降りた」
‘がははっ、正宗の女か?’
「いや、そうなる女だ」
‘そうかそうか、ほな急ぐわ。症状は?’
「わからない…逃げてる」
‘ぶわっはっ…わしその子、見てもないのに気に入った。はよ見つけて連絡くれ。わしは近くで待機やな’
探し始めて1時間半、ようやく最寄り駅のひとつ向こう駅前のファーストフード店にいると連絡がありすぐに向かう。俺たちが到着した時、綸は店を出て男に腰を抱かれていた。車を飛び出すと駿が低く
「正宗!お前は綸ちゃん、俺が男」
プライベートモードで俺を呼び、やり過ぎないよう男には触るなと言う。俺と同い年の潤と駿は4歳の頃から親父の側近、畠山さんに連れられ本家に来るようになり、共に学び訓練し遊んだ仲で30歳の今までずっと変わらず側にいる。時に側近、時には秘書そして時には親友となる双子だ。
その良く似た双子を瞬時に見分けた綸に感心しながら車へ彼女を乗せ泉先生に診察を任せる。頭は打っておらず足首捻挫が一番酷そうだ。不自由な足でも家に帰り寝て治すと言う彼女は人に頼るという事を知らないのだろう。俺だけを頼り俺だけに甘えて欲しい。どろどろに溶かしてやりたい。そう思っていた俺が甘いと知るのはすぐの事だった。彼女の部屋を見た俺と潤は思わず‘はっ?’と声を上げた。物が少ないというよりは何もない、毎日人が生活しているとは到底思う事のできない死に支度の整ったような異様さに、彼女の瞳の色の奥深さを感じ部屋を後にした。
127
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説

お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。
★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★
☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆
※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。
お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる