彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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荒獅子と黒椿 5

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「怖い…怖くて…許せない…ね」

聞いたことのないほど冷たい声に俺の荒獅子がカッと熱を持つ。玖未が大切な家族を思って怒っている。そのことが俺を歓喜させる。

思いを寄せる家族がいなかったこれまでの生活からの脱却。ただ物理的に脱却したのではなく、喜怒哀楽を持たず何もかも諦めたような意識で生きていたこれまでだったのが、精神的にも脱け出した。

それを俺の隣で成し遂げて見せてくれる玖未が愛しくて堪らない。

「許せねぇな」
「ん」
「こういう場合、相手に気持ち…怒りをぶつけたいが…出来る場合と出来ない場合がある」
「…そうなの?…そっか…地下室へのご案内は今はしてない、使われていないって言ってたね」
「くっくっ…玖未はそこを使って俺たちが相手を痛めつけるというのが怖くないのか?」
「………」

地下室と言い出すあたりの玖未の心境を確かめたい。

「若、目黒さんがもう着きます」
「ん」

俺が野沢に返事をすると、腹に回った俺の腕をきゅっと掴んで玖未が答えた。

「怖くはないよ、私は…でも痛めつけるって…やる方も気分が良くないでしょ?難しいね…出来る場合っていうのは…地下室だとかこの間みんなが夜中に出掛けたことでしょ?出来ないっていうのは…相手が…なんだろ…法に守られてる?そんな感じ?」
「その通り。よく分かってんな…さすが俺の玖未」

チュッ…こめかみに唇を落とすと

「相手が法に守られて生温い刑で終わったとしても…悠仁やみんなの手や心が痛まないなら、その方がいいかな。それでもきっとそんな人は幸せになれないよ」

玖未はゆっくりと……家族への想いをまとめて言葉にした。

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