彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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大切な枝葉たち 16

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「悠聖さんだからと門を通すことのないように、組員たちに徹底して来ます」

大西が頭を下げてリビングを出ると

「ねぇ…弟は結婚詐欺にあったってこと?それは可哀想だね…」

玖未が俺の手を握ったまま聞く。

「玖未、冷たい親だと思うだろうが可哀想ってことはねぇ」

俺より先に口を開いたのは親父だった。

「人生で一度も連絡してきたことのない男がここまで来た。それには悠聖自身の思惑も何かしらあると考えるのが普通だ。例えば、ここの息子だと名乗った生活が金に困らないと計算しているとか、な。俺はアイツが一社会人としてやっていけるだけのサポートはした。それでおしまいだ。この須藤にいるたくさんの組員の方が大切な家族だから、優先すべき者、守るべき者や場所ははっきりしている」

「お父さん…さすが親分…かっこいい…美味しいご飯を作ってくるよ。太郎と次郎も一緒に食べよう」

そう言いながら立ち上がった玖未は、タンクトップの上に着ているカーディガンの袖をぐいぐいと捲り上げながらキッチンへ向かう。

「親分…って…子どもの思いつきそうな言葉ですね」
「あの腕捲りのやり方も、少し子どもっぽい。そこがまた玖未さんの魅力ですね」

古原と桝井が小声で言うと親父が

「ははっ…悠仁は地下室へご案内されないようにな」

と小さく笑う。

「その玖未がいるのに、あり得ねぇ失態だろ?」
「その通りだ。悠聖は外部一般人と同じだったが、今回のことでリスト入りさせて組内に周知させる」
「ん」

警戒人物認定ってことだ。

「実際、金に困ってんのか?」

俺は親父や北さんが定期的に調べていることは知っていたが報告は受けていない。弟が仕事を辞めたという時に、一応知らせておくと報告があったのは、すり寄りの可能性を考えてのことだっただろうが、数ヶ月でもう働いていると聞いたはず。

「大学出るまでは贅沢が出来るほどの生活だったのが、社会人になって生活費を稼ぐ大変さに直面したんだろうな。甘えた母子だ。一日何時間も拘束されて働いた金が全て生活費に消えていく。それまでは何もせずに通帳に湧いてきた金で生きていたのに」
「…玖未の苦労以上の苦難を知っている者からすれば…ヤキ入れられんぞ…」

ダイニングの向こう側にあるキッチンで何やら刻んでいる音がするので、玖未には聞こえない。
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