彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

業が深く罪深い 19

「みんな…ワガママだ…」

思わずそう呟くほど、みんなが‘これ食べたい’と言うのではなく、少しずつ全部って言うんだもの…仕方なく、あるだけの小皿にポークケチャップを乗せ、あるだけのお茶碗と汁椀に次々と3種類の米を入れ、とろとろ玉ねぎの鍋はお玉と一緒にどーんと食堂の真ん中に置きセルフサービスとする。

外の組員さんたちに好評で、大鍋に5、6人分だけ残っていたカレーは10杯に分けてカウンターに置くと匂いを嗅ぎ付けた人の先着順となる。

まだ外の人と灰谷兄妹は食べていないよね…急いであるだけの食パンをフレンチトーストの液に浸ける。もうこれで本当に食材がないよ。あ、そうめんはあるか…とりあえず、頭には入れておこう…と、ここでお父さんがやって来た。

皆が特に何も言わないところを見ると、帰って来た時に挨拶したんだろうね。

「玖未、ありがとうな。仕事のあと、こんなにしっかりと飯が食えるってのは誰にとっても幸せなことだ。家族を代表して礼を言う」
「…ぁ…お父さん…ん、私も…家族だから…」
「そうだ、玖未は須藤の家族で俺の娘だ。今日、婚姻届を出すんだろ？」

コクン…

「長い日だが…最高の日だ」

お父さんはそう言うと、何も食べないで戻って行った。

「姫ちゃんの顔を見に来たんだねぇ、親父は」

そう言ううさのタンクトップから見える肩には擦り傷がある。

みんな無事って言っても、昨日までとは違う仕事をして来たんだね…須藤組…私の家族。