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暗暗裏に進むのはどちらか 8

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「玖未」
「…もう終わった?」
「ん」
「こっち…まだ…」

一瞬だけ俺に目を向けてから大きな画面に見入るのは、いいところなのだろう。その玖未をひょいっと持ち上げて膝の間に抱えても当たり前のように座っている。

隣の里と目が合うと

「お疲れ、若。玖未ちゃん、これめっちゃ好きだわ」

と小さく笑っている。

「これだけじゃなく、ここ制作映画は好きそうだよ」

世界的に有名な日本発、子どもから大人まで…むしろ大人が観るためのアニメ映画。マンションにも揃えるか。

「里、それは何を飲んだのですか?」

野沢が玖未の邪魔にならないよう小声で聞きながら、俺に缶ビールを手渡す。

「コーヒーフロート」
「…美味しかった…」

玖未が呟くのでこちらの話も聞いているのだと分かる。それなのに、俺が缶を開けるとビクッとするところが分からねぇ。コクコクと飲んだあと

「ん?」

玖未に飲むかと缶を差し出すと、玖未が顔だけ横に向けたので缶を口に持って行ってやると小さく一口飲んだ。

「はぁ…終わった…」

脱力した玖未が俺に背中を預けてもたれてくる。その耳に髪を掛けてやると

「玖未ちゃん、疲れてんの?」

右京がいつもの調子で聞いた。

「…一生懸命…みすぎた…」
「一生懸命見ないと理解できないよな、ここの映画。メッセージ性が強いから」
「右京でそれなら…私は何倍も一生懸命見ないとだね」
「勉強とは違う感性が必要だからあまり関係ないんじゃない?」
「…右京…お疲れ…喋ってる…元通りだね。大丈夫?」
「全部解決。全然大丈夫。俺とももう一本、映画観る?」
「…右京は明日会社です。里くんも、講義とバイトありです…解散」
「ぶっ…玖未ちゃん…野沢の真似?」

骨をイってるかもしれない右京は腹を抱えて笑うのは痛いだろうが、全くその素振りを見せずにいつもの右京だ。それでこそ俺の側近ってもんだ。

俺の最愛の唯一を余裕で守れねぇでどうする。


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