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暗暗裏に進むのはどちらか 2
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「雨…気づいてなかった」
「今だろ。俺たちが戻る時には降ってなかったから」
そういえば6月だよね。アパート暮らしで、歩いて買い物や仕事に行く生活では、梅雨をまともに感じたけれど今年はあまり気にしてなかった。
壁の分厚いマンションでは雨音が分かりにくいし、高性能洗濯機が乾燥までしてくれて生乾きの臭いも気にならない。外出には傘が必要のない車移動。
「私…梅雨が憎たらしくならないほど…温室育ち?」
「くっ、温室育ちの意味はちょっと違う」
「間違い?誤用ってやつですか?」
「玖未さん、誤用は覚えて使いこなせてますよ。今のは満点です」
「やった…ひとつ賢くなった」
野沢さんに少し前に教えてもらった言葉を使ってみた。
最近たまにこういうことがある。皆の話を聞いて話をしていると、これまでに聞いたことがあっても何となくの意味しか知らない言葉が多いと気づいたから。
悠仁が繋いだ手の甲を親指で撫でながら
「温室育ちは、大事にされて育って世間の苦労を知らず鍛えられていないこと…玖未はしっかり鍛えられた社会人。俺にふさわしい大人だ」
と最後は指先にキスをした。
「…右京…静かだね…」
「うん?そうでもないよ。はい、玖未ちゃん…到着…っと」
「……悠仁」
「ん?」
「右京が麒麟モードに見えるのは…気のせい?」
「玖未が当たってるかもな。表でなく裏の仕事のミーティングだからな」
「それって…みんな危ないこと?」
私がそう聞くと悠仁がぎゅっと私を抱きしめ、大きな手で強く後頭部を抱えた。
「今だろ。俺たちが戻る時には降ってなかったから」
そういえば6月だよね。アパート暮らしで、歩いて買い物や仕事に行く生活では、梅雨をまともに感じたけれど今年はあまり気にしてなかった。
壁の分厚いマンションでは雨音が分かりにくいし、高性能洗濯機が乾燥までしてくれて生乾きの臭いも気にならない。外出には傘が必要のない車移動。
「私…梅雨が憎たらしくならないほど…温室育ち?」
「くっ、温室育ちの意味はちょっと違う」
「間違い?誤用ってやつですか?」
「玖未さん、誤用は覚えて使いこなせてますよ。今のは満点です」
「やった…ひとつ賢くなった」
野沢さんに少し前に教えてもらった言葉を使ってみた。
最近たまにこういうことがある。皆の話を聞いて話をしていると、これまでに聞いたことがあっても何となくの意味しか知らない言葉が多いと気づいたから。
悠仁が繋いだ手の甲を親指で撫でながら
「温室育ちは、大事にされて育って世間の苦労を知らず鍛えられていないこと…玖未はしっかり鍛えられた社会人。俺にふさわしい大人だ」
と最後は指先にキスをした。
「…右京…静かだね…」
「うん?そうでもないよ。はい、玖未ちゃん…到着…っと」
「……悠仁」
「ん?」
「右京が麒麟モードに見えるのは…気のせい?」
「玖未が当たってるかもな。表でなく裏の仕事のミーティングだからな」
「それって…みんな危ないこと?」
私がそう聞くと悠仁がぎゅっと私を抱きしめ、大きな手で強く後頭部を抱えた。
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