172 / 284
心得違い 6
しおりを挟む
「そうですか。外ではそこまでにして詳細は後ほどお願いします」
野沢の声に頷き、そのまま後ろについた千田はたくとよく似た目元を鋭くしている。
もう一店からも組員が引き上げてきたので、繁華街を半分と少し歩いたところで引き上げることにした。
ゆっくり最後まで歩いていては帰りが遅くなる。すぐに屋敷へ戻り、報告を聞いた。
女はどちらの店でもカウンターでビールを飲み、すぐには帰らないようなので店の者が‘待ち合わせか’‘この辺りは初めてか’など当たり障りなく聞き始めたらしい。どこからどんな女が送り込まれるか分からないのだから、これは当然のことで、その答えが用意周到な嘘かどうかを見分けたいところだ。
「ふふっ…初めてって言っても…私は須藤さんや本間さんの背中の刺青を見たことがあるんですけどね」
というのが女の答えで、その様子はとても自慢気にも見え
‘ほら、私に何でも聞いて。聞きたいでしょ?’
というオーラが見えたらしい。しかし須藤の店ではそんな戯れ言に付き合う奴はいない。俺たちの刺青は繁華街では有名なので‘見た’など誇張して話の中心になりたいだけの奴だと認識し、そのあとは話をしていないらしい。
「反応が期待通りでなかったので2店目へ行って同じように話をした、ってところか?」
「右京さんの言う通りとも思えますし、オールブラックの装いでってところから…ほんの憶測ですけれど…玖未さんを装おって何か発信しようとした?いやぁ…無理なんですけどね、あんなんが若の女のはずがないし…でもアイツ、頭、おかしいでしょ?」
「千田…ムカつく憶測だが…可能性がゼロでないところが…素人の怖いところだな」
「はい、若。若の荒獅子に色が入ったことは周知の事実で、でも玖未さんのお披露目をしたわけでも通達が出たわけでもありませんから」
野沢の声に頷き、そのまま後ろについた千田はたくとよく似た目元を鋭くしている。
もう一店からも組員が引き上げてきたので、繁華街を半分と少し歩いたところで引き上げることにした。
ゆっくり最後まで歩いていては帰りが遅くなる。すぐに屋敷へ戻り、報告を聞いた。
女はどちらの店でもカウンターでビールを飲み、すぐには帰らないようなので店の者が‘待ち合わせか’‘この辺りは初めてか’など当たり障りなく聞き始めたらしい。どこからどんな女が送り込まれるか分からないのだから、これは当然のことで、その答えが用意周到な嘘かどうかを見分けたいところだ。
「ふふっ…初めてって言っても…私は須藤さんや本間さんの背中の刺青を見たことがあるんですけどね」
というのが女の答えで、その様子はとても自慢気にも見え
‘ほら、私に何でも聞いて。聞きたいでしょ?’
というオーラが見えたらしい。しかし須藤の店ではそんな戯れ言に付き合う奴はいない。俺たちの刺青は繁華街では有名なので‘見た’など誇張して話の中心になりたいだけの奴だと認識し、そのあとは話をしていないらしい。
「反応が期待通りでなかったので2店目へ行って同じように話をした、ってところか?」
「右京さんの言う通りとも思えますし、オールブラックの装いでってところから…ほんの憶測ですけれど…玖未さんを装おって何か発信しようとした?いやぁ…無理なんですけどね、あんなんが若の女のはずがないし…でもアイツ、頭、おかしいでしょ?」
「千田…ムカつく憶測だが…可能性がゼロでないところが…素人の怖いところだな」
「はい、若。若の荒獅子に色が入ったことは周知の事実で、でも玖未さんのお披露目をしたわけでも通達が出たわけでもありませんから」
84
お気に入りに追加
257
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる