彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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成長期と成長痛 11

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いざ出掛けるとなると、これも想定内…悠仁と私が乗る車には右京と野沢さん。その前後に1台ずつの黒塗りがつき、そこにはもちろん大西さんと津川さんも乗っている。

ちょっと意外だったのは、津川さんの私服がオフホワイトのショールカラーカーディガンでお上品だったこと…でもヤクザっぽさは一番だというところが津川さんだ。

私が驚いたのはここからだった。

モールまでの道中、野沢さんがひっきりなしに電話をしている。そして右京と悠仁に次々に報告をするのだ。

「ご苦労様です…では、そのまま全館継続お願いします」

と電話を終えては

「この2時間、該当する者はおりません」

と報告して、また電話で

「車両は北側駐車場へ侵入。そこから誘導ありです」

と同じ事を2回言ってから

「車両をまとめるよう確保済みです。パンケーキ店とは反対側からの入店となります」

と報告している。詳細は理解出来るはずがないけれど、大変なことになっているというのはわかって緊張してきた。

「玖未、大丈夫だ」
「…聞いても…いいのかな?」
「ん?野沢、状況説明」
「はい、玖未さん。私からご説明します」

野沢さんが教えてくれたのは、待ち合わせ2時間前の12時から組員さんが10名ほどモール内全館を歩いて敵対するような団体の人物等の来館がないかどうかチェックを続けていること。
駐車場を安全かつ確実に確保するため、すでに車がまとめて駐車してあるのと入れ替えにこの車列の3台をまとめて駐車すること。
さっきは侵入経路を前後車両に伝えたから同じことを二度言った…そうだ。

どれだけの人がどれだけの時間動くの?

大きなくしゃみどころではない驚きで無反応になってしまった。



「玖未ちゃーん。おーい、大丈夫?」

モールが見える最後の交差点の信号待ちで、右京が私を振り返った。

「怖くないよ?怖くないように、前もって動いているんだから大丈夫」

そう言った右京がまた前を向いたけれど…

「そうじゃない…の…」
「ん。玖未、それを具体的に言えるだろ?言ってみろ」
「…怖くはないよ」
「ん」
「でも…それだけの人が…そんなに動いているって…お出掛けは難しいんだなって…思う」
「組員の大切な仕事をしているだけだ。会社員とは違う仕事なだけで、本人たちは当たり前に動いている」
「…そう」
「もし、俺や玖未が全く出掛けなくなったら組員がザワツク…大きな抗争前なのか…ってな」
「…」
「俺たちが普通に日常的な動きをしていてこそ、組員にとっちゃ落ち着きある日常だ。だからこれでいい。遠慮なくどんどん出掛けていい」

悠仁が私の手をきゅっと握りしめてそう言うのだから信じるけど、慣れるにはちょっと時間がかかるかもしれない。大西さんと津川さんのように、私から見えるところで動くのではない人のことを考えると…これまでの人生で人間関係が希薄だった私からすればとんでもなく巨大な構図が急に目の前に出現したのだから。
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