彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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現在とか未来とか 4

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「あれこれ言うだろうが、玖未はそこまではっきり意思表示をすれば終わりだ。あとは俺が出る」
「若、ここは私が出た方がいいと思いますのでお任せください」
「じゃあ、玖未。エビチリをフォークで食べながら野沢の観賞をするぞ」

俺がそう言って頭を撫でると、クスッと小さく笑った玖未が‘観賞’と呟いた。

その目が笑っていないところにゾクゾクする。

食べさせてやればいいのだが、ミカンのあーんと違い、食事は多少不自由しながらでも自分で口に入れる方が楽だと俺のケガの経験では思うから、手伝いつつも玖未が自分で食べるのを見守る。

左手のフォークでエビチリのエビを突き刺し、春巻きは手づかみで口に運び、左手のスプーンに苦戦しながらチャーハンを頬張る玖未が

「みんな…これ美味しいけどビタミン不足だ」

と言う。

「あとでオレンジ…デコポンでしたか、全員食べましょう」
「中華食って、ビール飲んで、デザートにミカン…俺の中では斬新」
「灰谷兄妹が玖未を雇いたいと言っていたが…」
「そうなの?」

右京が俺と玖未を順に見て聞く。俺が応えるのは簡単だが、一拍おいて玖未が言葉を出せるように待つ。

「びっくりした…だって、私が仕事を辞めたことを言ってないのに…」
「そうだよな、俺もびっくりしたわ」
「…うん…リハビリにどうかって。そのあとも…何て言ったっけ、悠仁?」
「ん?」
「意味は分かったんだけど…お医者さんなのにって…医者の不摂生?」
「医者の不養生」
「そうか、それなんだって」

玖未は難しい言葉も上手な敬語もカタカナ語も苦手だと思う。

高校へ行かず働きながら覚えた言葉…その職場もホテルのような場所ではなく居酒屋か大衆食堂だったのだから当然だろう。

それ以前のコミュニケーションも断然少ない。

「私たちも似たようなものですが、屋敷の食堂に行く日に何とかバランスよく食べていますね」
「…屋敷…?」
「須藤の家だ。もう暗いな…ここからも一部は見える。明日、上のバルコニーにも出てみればいい。それより、玖未。ひとついいか?」
「うん」
「食事を作るということを仕事にするのが嫌だったり、他にやりたいことがあれば灰谷の申し出など考えることなく断っていいぞ」

調理師は元々、玖未の選択ではなかったのなら、ただの生きる術にすぎない。それからも解放されていい。
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