彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

諭し説き口説く 1

「オーケー、オーケー、若、上手ねぇ。誰の髪で練習したの？」

さっさと俺の手からドライヤーを取り上げた灰谷妹を無視して

「ふざけた奴は放っておいて、玖未…」

俺がさらさらに仕上げた髪に触れながら慎重に言葉をかける。

「しばらく、うちにいてくれるか？」
「………」
「毎日治療が必要なことと、玖未のケガでは生活に手助けが必要なことが理由」
「………」
「きっと数時間後には、傷以外も痛み始める。軽い全身打撲のようなことが予想出来る」
「………」
「このマンションには、ここにいる全員が住んでいる」
「そうなんだよ、玖未ちゃん。毎日日替わりお泊まりでもいいよ？まずは俺んとこ、来る？」
「一番あり得ねぇ。お前、帰れ」
「玖未ちゃんが決めることだよ」
「お前は玖未の眼中にない」
「嘘だろ？毎晩会ってるよね？玖未ちゃん、俺の名前は？」

どうしよう…わからない…温度のない瞳からも玖未の心が読めるわ、俺。

困って俺を見た玖未に‘右京’と口を動かして見せてやる。

「…ぅきょ？あ…右京…？」
「ちょっと待って。今、教えたな？じゃあ、こっちは？」

俺を押し退けて右京が野沢を指差す。

「………」
「どういう認識で毎晩会ってるの？最初に名乗ったけど？」
「面白いアダ名みたいなのだったら可笑しいですね」

灰谷兄の言葉に玖未が瞳を揺らした。

「玖未ちゃん。吐いて…そこんとこ、聞かせてくれる？オモシロソーだし」