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差し響く 11
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治療の邪魔をすればキレるのが灰谷兄妹だから、一旦自分の部屋に戻りシャワーを浴びる。
もう2時だというのに、まだ始まったばかりという気分なのは、ここから全く眠る気がないからか。
俺がシャワーを終え、部屋着の黒のハイネックスウェットを被りながらリビングに行くと、鮮やかなグリーンのフーディーを着た右京がソファーに座ってガシガシと濡れた髪を拭いている。
右京と野沢は俺の部屋の鍵を持っていて、このリビングはオフィスのようになることもある。
すぐに野沢もライトグレーのロングカーディガン姿で現れ
「何か飲みましょうか」
とキッチンへ向かう。
「もう下りる」
「では、これだけでも持っていきましょう。会合での食事以来、何も飲んでおられないでしょう」
野沢は水のペットボトルを3本手にすると、俺と右京に1本ずつ渡してから
「若、大丈夫ですよ。間に合ったかどうかだけが問題ではありませんから」
俺に真っ直ぐ向き合った。
「玖未さんには‘100%無償の愛というのが存在する’‘手を差しのべてくれる人がいる’と認識してもらわないことには、最初の1歩…半歩が始まらないと思うんです。きっと体を守るよりも深い部分で玖未さんは悩み、傷つき、一人で耐えて分厚いかさぶたで塞いでいる」
「抱えたままで癒えることはなかっただろうな…年齢イコールのレベルで傷ついてきたかもしれない」
「その通りです。だから、今後の長い人生を考えれば十分間に合ったんです」
「いいこと言うよね、野沢。俺もそう思うわ。擦り傷や骨折っていうケガと、突っ込まれたっていう事実なら、女の子は絶対に骨折の方が救われたって思うよ。厳しいことを敢えて言うなら、玖未ちゃんの行動は危機管理がなってなかった…これまで無事だったことが奇跡」
「最後のは…俺は同意出来ない。玖未がどれだけ不注意であろうが、やりたいようにさせてやる。その上で守ればいいだけだ……右京の言いたいこともわかる。他の女だったらその通り、で終わる。でも玖未にそれは当てはまらない」
「チョー特別?」
「当然。俺は玖未が赤ちゃんがえりしようがかまわない。そこから俺に甘えてワガママ言ってくれるなら本望だ」
「承知しました。若の想いを尊重して俺もそのつもりで接することにします」
そう言いニコッと笑った右京はドライヤーを使うために立つ。自分の部屋ですればいいものを…右京を置いて俺と野沢が灰谷の部屋に下りると
「いいタイミングですね、どうぞ」
灰谷兄が玖未のいる部屋のドアを開けたまま、俺たちを招き入れた。
もう2時だというのに、まだ始まったばかりという気分なのは、ここから全く眠る気がないからか。
俺がシャワーを終え、部屋着の黒のハイネックスウェットを被りながらリビングに行くと、鮮やかなグリーンのフーディーを着た右京がソファーに座ってガシガシと濡れた髪を拭いている。
右京と野沢は俺の部屋の鍵を持っていて、このリビングはオフィスのようになることもある。
すぐに野沢もライトグレーのロングカーディガン姿で現れ
「何か飲みましょうか」
とキッチンへ向かう。
「もう下りる」
「では、これだけでも持っていきましょう。会合での食事以来、何も飲んでおられないでしょう」
野沢は水のペットボトルを3本手にすると、俺と右京に1本ずつ渡してから
「若、大丈夫ですよ。間に合ったかどうかだけが問題ではありませんから」
俺に真っ直ぐ向き合った。
「玖未さんには‘100%無償の愛というのが存在する’‘手を差しのべてくれる人がいる’と認識してもらわないことには、最初の1歩…半歩が始まらないと思うんです。きっと体を守るよりも深い部分で玖未さんは悩み、傷つき、一人で耐えて分厚いかさぶたで塞いでいる」
「抱えたままで癒えることはなかっただろうな…年齢イコールのレベルで傷ついてきたかもしれない」
「その通りです。だから、今後の長い人生を考えれば十分間に合ったんです」
「いいこと言うよね、野沢。俺もそう思うわ。擦り傷や骨折っていうケガと、突っ込まれたっていう事実なら、女の子は絶対に骨折の方が救われたって思うよ。厳しいことを敢えて言うなら、玖未ちゃんの行動は危機管理がなってなかった…これまで無事だったことが奇跡」
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「当然。俺は玖未が赤ちゃんがえりしようがかまわない。そこから俺に甘えてワガママ言ってくれるなら本望だ」
「承知しました。若の想いを尊重して俺もそのつもりで接することにします」
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