207 / 224
part 17-12
しおりを挟む
パチパチパチパチパチ…舞生さんが立ち上がり拍手して
「ボクの妹が成長して嬉しいっ、すっごく嬉しいっ。明日、ケーキ買ってあげるよ、紗栄ちゃんっ」
私の頭に大声をぶつける。
「褒められた…?」
「えぇぇ?褒めてる以外に何がある?」
「ちょっと…大声過ぎて頭に入らないけど…フルーツタルトがいいな」
「えぇぇ?ちゃんと聞こえてるじゃん、ケーキんとこだけ。まあいいよ、ボクが買ってくるよ」
「ありがとう、楽しみ」
鼻息荒く座った舞生さんの隣から
「次の来店で対応します。紗栄子さんはいつも通り勤務していただいて構いませんよ」
穏やかに言う福嶋さんに頷いた私に
「紗栄子の覚悟は皆が受け取った」
と龍之介が伝えてくれる。
「素人に指差された、笑われたなんてくらいイチイチ相手にしてられねぇし、気にもならねぇ。相手にすれば、ただ口で言い返すだけでも脅したと言われて警察が喜ぶ事態になるからな」
「うん」
「この程度の奴らに時間も金も使うのは無駄」
「うん」
そうだよね、制裁や粛清というものには時間もお金もかかるのだろう。
「だが、すぐに終わらせる。紗栄子の日常は快適であるべきだからな」
言い返すだけでも脅した…か。そして警察が喜ぶ…
自分の置かれる環境をとても分かりやすく伝えてくれるのは、さすが龍之介。そして私も同じ環境にいて、生活を共にする者だ。
「次にあの人が来たら、私、普通にお水を出していい?私がこそこそすることはないんだよね?」
「ん、俺の女だ。誰に聞かれたって堂々としていればいい」
私の休みを挟んで4日後、その地井さんはまた新しい友人らしき女性とカウンターに座った。
空雅さんが私を見たので、大丈夫だと頷いてからお水とおしぼりを用意して
「いらっしゃいませ」
彼女達の前に置く。
「オススメのドリンクは何ですか?」
「カフェオレです」
「どうして?」
「フレンチプレスで淹れたコーヒーで作るここのカフェオレは美味しいので」
「フレンチプレスって何?」
「プレスのフィルターが金属製ということです。ペーパードリップの紙フィルターと比べると、コーヒーの持つ油分を適度に液体側に残すことができ、ミルクとより相性良くなります」
きっと彼女は別の物をオーダーするだろうと思いながら、ペコ…下がると、矢口さんが引き上げてきたトレイを受け取る。ダラダラと彼女の相手をするつもりはない。他のお客様と同じように接客しただけだ。
「アイスハニーレモンティーソーダ」
フフッ…やっぱり、と思う声が聞こえて
「カフェオレ、ホットで」
彼女の友人は空雅さんにそう注文した。
「ボクの妹が成長して嬉しいっ、すっごく嬉しいっ。明日、ケーキ買ってあげるよ、紗栄ちゃんっ」
私の頭に大声をぶつける。
「褒められた…?」
「えぇぇ?褒めてる以外に何がある?」
「ちょっと…大声過ぎて頭に入らないけど…フルーツタルトがいいな」
「えぇぇ?ちゃんと聞こえてるじゃん、ケーキんとこだけ。まあいいよ、ボクが買ってくるよ」
「ありがとう、楽しみ」
鼻息荒く座った舞生さんの隣から
「次の来店で対応します。紗栄子さんはいつも通り勤務していただいて構いませんよ」
穏やかに言う福嶋さんに頷いた私に
「紗栄子の覚悟は皆が受け取った」
と龍之介が伝えてくれる。
「素人に指差された、笑われたなんてくらいイチイチ相手にしてられねぇし、気にもならねぇ。相手にすれば、ただ口で言い返すだけでも脅したと言われて警察が喜ぶ事態になるからな」
「うん」
「この程度の奴らに時間も金も使うのは無駄」
「うん」
そうだよね、制裁や粛清というものには時間もお金もかかるのだろう。
「だが、すぐに終わらせる。紗栄子の日常は快適であるべきだからな」
言い返すだけでも脅した…か。そして警察が喜ぶ…
自分の置かれる環境をとても分かりやすく伝えてくれるのは、さすが龍之介。そして私も同じ環境にいて、生活を共にする者だ。
「次にあの人が来たら、私、普通にお水を出していい?私がこそこそすることはないんだよね?」
「ん、俺の女だ。誰に聞かれたって堂々としていればいい」
私の休みを挟んで4日後、その地井さんはまた新しい友人らしき女性とカウンターに座った。
空雅さんが私を見たので、大丈夫だと頷いてからお水とおしぼりを用意して
「いらっしゃいませ」
彼女達の前に置く。
「オススメのドリンクは何ですか?」
「カフェオレです」
「どうして?」
「フレンチプレスで淹れたコーヒーで作るここのカフェオレは美味しいので」
「フレンチプレスって何?」
「プレスのフィルターが金属製ということです。ペーパードリップの紙フィルターと比べると、コーヒーの持つ油分を適度に液体側に残すことができ、ミルクとより相性良くなります」
きっと彼女は別の物をオーダーするだろうと思いながら、ペコ…下がると、矢口さんが引き上げてきたトレイを受け取る。ダラダラと彼女の相手をするつもりはない。他のお客様と同じように接客しただけだ。
「アイスハニーレモンティーソーダ」
フフッ…やっぱり、と思う声が聞こえて
「カフェオレ、ホットで」
彼女の友人は空雅さんにそう注文した。
64
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる