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part 16-18

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「片付けなくていいの?」

トレイをそのまま置いた龍之介に小声で聞くと

「片付けは当番がある」

と教えてくれた。すぐに愉さんも教えてくれる。

「20時くらい、もう当番が来て片付ける頃です。21時以降の食器は各自洗ってもらうルール」
「そうですか。ごちそうさまでした、美味しかったです。これ…甘いものが大丈夫ならどうぞ。取ってなかったと思うので」
「ありがとう、いただきます。若、泊まりですか?」
「今日は帰る」
「了解です」

一気に本家の朝食も何もかも経験するのは、チーズケーキを作り続けた後、仕事終わりの私にはキツいだろうと龍之介は言いながら私の手を引く。

「紗栄子さん、食べられましたか?落ち着かなかったのでは?」

お風呂上がりの父福嶋さんと廊下で会うと

「美味しくいただきました」

落ち着きないのは舞生さんだよ、と心で呟く。

「それなら良かった」

私に向かって頷いたあと

「若と一緒になられるまでですね。私達がこんな格好で気軽に声を掛けたり“お勤めご苦労様でした”なんて迎えることが出来るのも」

と微笑んでから、龍之介に一礼して歩いて行く。

「今の…どういう意味だった?」
「紗栄子は書類上、藤堂外部の者というのは分かるか?」
「うん、大丈夫」
「今は娘のように、もしくは舞生の友人のように、百貨店でも今日も意識的に気軽に声を掛けてるんだろうな」
「うん、嬉しかった」
「だが、俺と紗栄子が結婚すれば、紗栄子が上になるということだ」
「…それは…困るね…」

龍之介は繋いだ手にキュッと力を入れてから、長い足を前に出す。

「そう感じるなら、紗栄子がそう伝えればいい」
「いいの?」
「ん。これまでがどうとか、姐さんがどうとかは関係なく紗栄子と組員の関係を作っていけばいい」
「そっか…」
「外出先なんかでは、紗栄子の思う通りにいかないが家族としては快適に過ごせるのが一番だ。崎さんだって、外で俺についていればあんなんじゃねぇ」
「“どうして?若に貸すとは言ってねぇ”って?」
「ここではありだ」

部屋の前の紙袋を二人で持って部屋に入ると

「こうして龍之介が教えてくれるから大丈夫な気がする。ありがとう」

クローゼットの前で龍之介を見上げた。purururu…

「はい…」
“サエコはスマホを置いて歩いてんのかい?”

はっきりと聞こえる姐さんの声に、バッグに入れたままだと気づく。

「今度から持つように言う」
“奥で珈琲淹れたから”

ブチッ…
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