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part 15-7
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「行くぞ」
「ん」
親父自ら出るというのは、紗栄子を気に入った証拠だ。俺の女であろうが藤堂に入っちゃいない今、素人相手に親父が動くはずがないのだが。
「やり過ぎる必要はない。紗栄子とうちへの連絡がなくなって、関係性を口外しなければいいことだ。すでに一文無し状態の現在、路上に放り出すだけで生活に困る奴らだからな」
「現住所が坂戸組ということは、反社として金融機関や公安からマークされるから、ややこしいところの日雇いが精一杯だろうな」
「そういうことだ。日々の生活にも困るのが目に見えている。その現実を理解出来ていないだろうから理解させてやればいい」
「組員になることを固辞していたということは、反社と見られることに嫌悪と絶望があるんだろう」
構成員に名を連ねていないだけで、住まいも仕事もこの数ヶ月組員と同じでは言い逃れは出来ない。前職も坂戸系列の会社だったしな。
それを知っただけで絶望するに違いない。坂戸組からもうちからも放り出されて喜ぶどころか、絶望する運命だとは皮肉なものだよな。
囲ってもらえるものがなくなり、その上、ずっと一緒の経歴の二人を引き離せばダメージは計り知れない。
表の間の前に立つ組員が俺たちを見て一礼したとき
「ぅッ…ぐっぉ…」
小さくうめき声が聞こえた。
「空雅か?」
「はい。車の中から今も、口を開けば紗栄子さんの悪口を言う清水に我慢出来なくなったようです」
「ん」
俺の合図で秋田と福嶋が間口を開ける。
「清水さん、お待たせしました」
静かにそう言いながら上座についた親父が
「藤堂組組長、藤堂幸之介と申します。お二方が、うちの紗栄子に未だに御用があるようでしたので本日はお迎えにあがった次第です」
と続ける隣へ俺も座った。二人とも腹を抱えて傾いて座っているので、その後ろの空雅を見ると“骨はいってない”とジェスチャーで伝えてくる。
「ん」
親父自ら出るというのは、紗栄子を気に入った証拠だ。俺の女であろうが藤堂に入っちゃいない今、素人相手に親父が動くはずがないのだが。
「やり過ぎる必要はない。紗栄子とうちへの連絡がなくなって、関係性を口外しなければいいことだ。すでに一文無し状態の現在、路上に放り出すだけで生活に困る奴らだからな」
「現住所が坂戸組ということは、反社として金融機関や公安からマークされるから、ややこしいところの日雇いが精一杯だろうな」
「そういうことだ。日々の生活にも困るのが目に見えている。その現実を理解出来ていないだろうから理解させてやればいい」
「組員になることを固辞していたということは、反社と見られることに嫌悪と絶望があるんだろう」
構成員に名を連ねていないだけで、住まいも仕事もこの数ヶ月組員と同じでは言い逃れは出来ない。前職も坂戸系列の会社だったしな。
それを知っただけで絶望するに違いない。坂戸組からもうちからも放り出されて喜ぶどころか、絶望する運命だとは皮肉なものだよな。
囲ってもらえるものがなくなり、その上、ずっと一緒の経歴の二人を引き離せばダメージは計り知れない。
表の間の前に立つ組員が俺たちを見て一礼したとき
「ぅッ…ぐっぉ…」
小さくうめき声が聞こえた。
「空雅か?」
「はい。車の中から今も、口を開けば紗栄子さんの悪口を言う清水に我慢出来なくなったようです」
「ん」
俺の合図で秋田と福嶋が間口を開ける。
「清水さん、お待たせしました」
静かにそう言いながら上座についた親父が
「藤堂組組長、藤堂幸之介と申します。お二方が、うちの紗栄子に未だに御用があるようでしたので本日はお迎えにあがった次第です」
と続ける隣へ俺も座った。二人とも腹を抱えて傾いて座っているので、その後ろの空雅を見ると“骨はいってない”とジェスチャーで伝えてくる。
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