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part 12-3
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「返り血とか…何を言ってるのっ?あれだけホスピス、ホスピス、ホスピスって死ぬ間際の人間に会いに行っていたのに人を殺めるようなこと…ぅんぐっ…」
「若と紗栄子さんがお話中です」
言葉を発した清水の首を指2本で押さえたのは松居だ。首を締めているようには見えないが、呼吸や声が発せないツボは確実に押さえている。
福嶋が片方脱げていた紗栄子のスニーカーを拾ってくると
「これも脱がされましたか?」
と聞きながら足元に置いた。
「ううん…ハサミが怖かったから、足バタバタバタって…そしたら押さえようとしたどっちかの腕に当たって…飛んでいった…」
「ナイスファイトです、さすが紗栄子さん」
福嶋がそう言うと僅かに表情を緩めた紗栄子に
「スニーカーにGPS付けてあるから追えた」
とひとつ種明かしをしてやる。
「…スマホは?」
「回収してある、壊れてもいねぇ」
コクン…どこに安心したのか、やっと震えが止まったか。
「車で待つか?先に帰って待つか?」
「車」
「ん」
即答した紗栄子を片方で抱き上げると、乱れた髪を手で撫でながら
「コイツらに言うことはないか?」
と聞いてやる。倒れていた女も組員が座らせ紗栄子を見ている。口から血が流れているのは、歯が折れたか口内が切れたか…
「…言いたいこと…2人は知らない人なの…」
女とビデオカメラの男のことだな。
「お義母さんは…まだホスピスのことをあんな風に言うことに驚く…絶対に分かりあえないから、もうどうでもいいかな」
「ん」
「伊坂さんは…伊坂さんには謝って欲しい…龍之介にも、芦田さんにも、空雅さんにも…本家の人…藤堂の人みんなに謝って欲しい…大切な家族を裏切ったらダメだよね。みんないい人なのに…それだけ」
「紗栄ちゃんはいいの?」
「チッ…」
パコッ…舞生の言葉に俺が舌打ちするのと芦田が舞生の頭を叩くのは同時だった。
「若と紗栄子さんがお話中です」
言葉を発した清水の首を指2本で押さえたのは松居だ。首を締めているようには見えないが、呼吸や声が発せないツボは確実に押さえている。
福嶋が片方脱げていた紗栄子のスニーカーを拾ってくると
「これも脱がされましたか?」
と聞きながら足元に置いた。
「ううん…ハサミが怖かったから、足バタバタバタって…そしたら押さえようとしたどっちかの腕に当たって…飛んでいった…」
「ナイスファイトです、さすが紗栄子さん」
福嶋がそう言うと僅かに表情を緩めた紗栄子に
「スニーカーにGPS付けてあるから追えた」
とひとつ種明かしをしてやる。
「…スマホは?」
「回収してある、壊れてもいねぇ」
コクン…どこに安心したのか、やっと震えが止まったか。
「車で待つか?先に帰って待つか?」
「車」
「ん」
即答した紗栄子を片方で抱き上げると、乱れた髪を手で撫でながら
「コイツらに言うことはないか?」
と聞いてやる。倒れていた女も組員が座らせ紗栄子を見ている。口から血が流れているのは、歯が折れたか口内が切れたか…
「…言いたいこと…2人は知らない人なの…」
女とビデオカメラの男のことだな。
「お義母さんは…まだホスピスのことをあんな風に言うことに驚く…絶対に分かりあえないから、もうどうでもいいかな」
「ん」
「伊坂さんは…伊坂さんには謝って欲しい…龍之介にも、芦田さんにも、空雅さんにも…本家の人…藤堂の人みんなに謝って欲しい…大切な家族を裏切ったらダメだよね。みんないい人なのに…それだけ」
「紗栄ちゃんはいいの?」
「チッ…」
パコッ…舞生の言葉に俺が舌打ちするのと芦田が舞生の頭を叩くのは同時だった。
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