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part 9-4
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そのままソファーに優しく押し倒され
「ちょ…っ…と…待って、待ってっ…」
かろうじて両腕を彼の胸に突っ張る。
「ん?」
「……ゆっくり“ん?”って…ふふっ…こっちはドキドキなんだけど…」
「俺も紗栄子にドキドキする」
わぁ、ちょっと待って。そのバリトンはお腹がきゅっとなる。
「じゃなくって…待ってっ」
「いつまで?」
「私ご飯…作ってたんだけど?」
「…食うか…じゃないと紗栄子が朝までもたねぇな…」
そう言った彼は私の腕を引っ張り
「今は…キスもヤバいな…止められない自信がある」
と一緒に立たせた。
「今夜は待たない。いいな?」
両手で私の頬を覆った彼は
「眠れない夜になる。しっかり食えよ」
ペロッ…私の上唇を舌先でほんの少しだけ舐めた。
「私達はこれで」
「ぇ…夕食…一緒じゃないの?」
表のリビングには、すっかり帰り支度を済ませた福嶋兄弟と芦田さんがいて、福嶋さんが龍之介に頭を下げた。
「紗栄ちゃん、龍とゆっくり夕食デートすればいいよ」
「……いっぱい作ってしまった…」
「皆、食って帰れ」
「若、よろしいのですか?」
「芦田も紗栄子の買い物を見てただろ?その成果だからな」
「それはそうですね。まだまだ慣れないスーパーでの買い物の割に、キッチンではずっと手を動かしておられたので、楽しみにいただいて帰ります」
なんだかハードルが上がった気もしたけれど、作れるものには限りがあるから慌てても仕方がない。
「紗栄ちゃん、今日のメニューは?運ぶものは?」
舞生さんは手伝うとは言わない。自他ともに料理が得意でないと自覚しているから。
「今から春巻きを揚げるの。あとは出来てる」
「ヤッタ、ボク春巻き好き。じゃあ、こっちの運ぶね」
「お願いします」
出来てるのは、炒り豆腐、ワカメと野菜の中華サラダ、ナスの味噌炒め。舞生さんが運んでくれると、飲み物を何にするかと相談が始まったようだったけど、龍之介は
「俺は酒はいらねぇ」
と今夜は飲まないらしい。
「ちょ…っ…と…待って、待ってっ…」
かろうじて両腕を彼の胸に突っ張る。
「ん?」
「……ゆっくり“ん?”って…ふふっ…こっちはドキドキなんだけど…」
「俺も紗栄子にドキドキする」
わぁ、ちょっと待って。そのバリトンはお腹がきゅっとなる。
「じゃなくって…待ってっ」
「いつまで?」
「私ご飯…作ってたんだけど?」
「…食うか…じゃないと紗栄子が朝までもたねぇな…」
そう言った彼は私の腕を引っ張り
「今は…キスもヤバいな…止められない自信がある」
と一緒に立たせた。
「今夜は待たない。いいな?」
両手で私の頬を覆った彼は
「眠れない夜になる。しっかり食えよ」
ペロッ…私の上唇を舌先でほんの少しだけ舐めた。
「私達はこれで」
「ぇ…夕食…一緒じゃないの?」
表のリビングには、すっかり帰り支度を済ませた福嶋兄弟と芦田さんがいて、福嶋さんが龍之介に頭を下げた。
「紗栄ちゃん、龍とゆっくり夕食デートすればいいよ」
「……いっぱい作ってしまった…」
「皆、食って帰れ」
「若、よろしいのですか?」
「芦田も紗栄子の買い物を見てただろ?その成果だからな」
「それはそうですね。まだまだ慣れないスーパーでの買い物の割に、キッチンではずっと手を動かしておられたので、楽しみにいただいて帰ります」
なんだかハードルが上がった気もしたけれど、作れるものには限りがあるから慌てても仕方がない。
「紗栄ちゃん、今日のメニューは?運ぶものは?」
舞生さんは手伝うとは言わない。自他ともに料理が得意でないと自覚しているから。
「今から春巻きを揚げるの。あとは出来てる」
「ヤッタ、ボク春巻き好き。じゃあ、こっちの運ぶね」
「お願いします」
出来てるのは、炒り豆腐、ワカメと野菜の中華サラダ、ナスの味噌炒め。舞生さんが運んでくれると、飲み物を何にするかと相談が始まったようだったけど、龍之介は
「俺は酒はいらねぇ」
と今夜は飲まないらしい。
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