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part 8-9

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「…っ…ヤベ…っ…とまんね…」

抱かない、今はまだ抱きはしない。

だが…深く口づけるうち、紗栄子が甘い香気を放ちながら俺の理性を試す。

再び深く熱を伝え合ううちに、紗栄子の呼吸が異常に不規則に感じる。

「鼻で息…出来るか?」

それでも肩と胸を動かすように酸素を求める紗栄子の唇を離すと、頭を抱えて強く抱きしめた。

「悪い…甘くて…紗栄子の放つ香りも甘い毒のようで…」

バッ…

俺が強く抱きしめる手と紗栄子の艶髪が滑り、俺の手が彼女の首あたりに落ちる勢いで紗栄子が俺を見上げる。

「…毒?」
「毒…紗栄子の甘い毒で癒され…狂わされるなら本望だ」
「……私は……」

俺ははっきりと言葉を飲み込んでしまった紗栄子の唇を指先でゆっくりとなぞった。

「聞きたい。どんな言葉も聞きたい」
「…私……私はずっと…最初から…龍之介と会った時からずっと…龍之介の言葉が甘い言葉だから…甘い話だから…」

飲み込んだ言葉を音にしながら紗栄子の瞳が湿度を帯びる。

「ん」
「だから……甘い毒だと…龍之介の言葉を毒だと…思っていた…の…」
「同じ感性」

俺がそう言うと紗栄子の瞳の湿度が100%を超える。

「俺は癒されもする。紗栄子の毒で…」

彼女の下の睫毛と瞼を越えた水滴が頬を伝う。

「それが俺たちなら…そうやって愛し合うだけだ。遠慮も躊躇うことも必要ない。紗栄子…深く…俺のところまで来い」

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