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part 7-8
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「空雅さんたちに教えた人って…私もいろいろ教えてもらえるかなって。ダメなことはパコッて私にもちゃんと怒ってくれそうだし」
「ん。空雅は?」
「よくわからないけど…バランス的には空雅さんと舞生さんペアじゃない方がよくない?」
「空雅、舞生ペアなら俺の方だな」
「同級生チーム?」
「やかましいと紗栄子がもたねぇ」
「空雅さん、やかましい?」
「舞生とおかしなスイッチが入ったらな」
「そう…芦田さんとならいい?」
「ん」
「じゃあ、芦田さんと空雅さんにお願いします」
私がそう言うと彼の手が肩から腕を滑り降りて手まで辿り着く。
そしてその手をそっと掲げた彼は、私の指先にキスをした。龍之介はそのまま手を引き上げ一緒に立ち上がると、私の肩を抱いて表に戻りながら
「紗栄子の考える生活ってのには、遊びがないだろ?」
と言う。
「遊びってわからない」
そう応えてから一段降りると
「またヤバいワードが聞こえるって」
地獄耳らしい空雅さんが大きなソファーから振り向いた。
「100均の買い物しかしてなくて、遊びがわからないって紗栄ちゃん、人生やり直すよ?ここで龍とオレたちと」
「うーん…遊びってカフェ以外に何すればいいの?」
私がそう言いながら龍之介と座ると
「紗栄子さん、遊びとはワクワクしながら自分の可能性を見つけて試行錯誤する活動です」
と芦田さんが口ひげを動かした。
「物事にゆとりのある意味にも使う言葉ですから余裕があることが前提ですね。音楽や映画、本や芸術を楽しむことも含みますし、買い物やネイルやメイクなんかも違う自分に出会える機会でしょう」
と福嶋さんも薄い色のレンズ越しに私を見る。
「あの…私…特に遊びたいとか贅沢がしたいとかではないんですけど…1週間動けなくてご迷惑おかけしたんですけど…」
「ん、ゆっくりで大丈夫だ。皆、分かってる」
「うん。これからここでどうやって…生活していくのか…考えながら過ごしたいと思い…ます」
「芦田、空雅。紗栄子についてくれ」
福嶋さんが眼鏡のフレームに触れてキュッと上げ、舞生さんはソファーに身を投げ、芦田さんと空雅さんがスッと立ち上がると、2人ともふたつ開けていたシャツのボタンをひとつ止めた。
「ん。空雅は?」
「よくわからないけど…バランス的には空雅さんと舞生さんペアじゃない方がよくない?」
「空雅、舞生ペアなら俺の方だな」
「同級生チーム?」
「やかましいと紗栄子がもたねぇ」
「空雅さん、やかましい?」
「舞生とおかしなスイッチが入ったらな」
「そう…芦田さんとならいい?」
「ん」
「じゃあ、芦田さんと空雅さんにお願いします」
私がそう言うと彼の手が肩から腕を滑り降りて手まで辿り着く。
そしてその手をそっと掲げた彼は、私の指先にキスをした。龍之介はそのまま手を引き上げ一緒に立ち上がると、私の肩を抱いて表に戻りながら
「紗栄子の考える生活ってのには、遊びがないだろ?」
と言う。
「遊びってわからない」
そう応えてから一段降りると
「またヤバいワードが聞こえるって」
地獄耳らしい空雅さんが大きなソファーから振り向いた。
「100均の買い物しかしてなくて、遊びがわからないって紗栄ちゃん、人生やり直すよ?ここで龍とオレたちと」
「うーん…遊びってカフェ以外に何すればいいの?」
私がそう言いながら龍之介と座ると
「紗栄子さん、遊びとはワクワクしながら自分の可能性を見つけて試行錯誤する活動です」
と芦田さんが口ひげを動かした。
「物事にゆとりのある意味にも使う言葉ですから余裕があることが前提ですね。音楽や映画、本や芸術を楽しむことも含みますし、買い物やネイルやメイクなんかも違う自分に出会える機会でしょう」
と福嶋さんも薄い色のレンズ越しに私を見る。
「あの…私…特に遊びたいとか贅沢がしたいとかではないんですけど…1週間動けなくてご迷惑おかけしたんですけど…」
「ん、ゆっくりで大丈夫だ。皆、分かってる」
「うん。これからここでどうやって…生活していくのか…考えながら過ごしたいと思い…ます」
「芦田、空雅。紗栄子についてくれ」
福嶋さんが眼鏡のフレームに触れてキュッと上げ、舞生さんはソファーに身を投げ、芦田さんと空雅さんがスッと立ち上がると、2人ともふたつ開けていたシャツのボタンをひとつ止めた。
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